京都大学(京大)と日本製紙は、製紙用パルプがセルロースナノファイバの束であることに着目し、化学修飾を行うことで紙を透明化することに成功したと発表した。

同成果は、同大生存圏研究所の矢野浩之 教授らによるもの。詳細は2014年3月25日に開催されたNanocelluloseSymposium2014/第250回生存圏シンポジウム「セルロースナノファイバー ~日本には資源も知恵もある~」で発表された。

従来、フレキシブルエレクトロニクスとしては軽量かつ割れにくい高透明高分子フィルム基板の適用が検討されてきたが、ガスや水蒸気を透過しやすく、線熱膨張係数が大きいという欠点があった。

こうした欠点の克服に向け、幅20~50nmの高弾性・低熱膨張セルロースナノファイバーを透明なプラスチックと複合化させることで、透明性を保ちつつプラスチックに低線熱膨張性を付与することも検討されてきたが、セルロースナノファイバーは、数%程度の低濃度でしか取り扱うことが難しく、機械的解繊による製造ではさまざまな要因によりコスト高になること、また性能としては、吸湿性の問題や、疎水性である樹脂との相溶性などの課題があった。

研究グループは今回、セルロースナノファイバーの束である製紙用パルプに化学修飾を行うことでパルプを構成しているセルロースナノファイバー間の結束構造をほぐし、その間に樹脂を浸透させることで、パルプの内部深くまで樹脂を浸透させると、透明なパルプ繊維複合樹脂材料が得られることを発見した。

実際に製紙用パルプを化学変性後にシート化し樹脂と複合化したシートを用いて実験を行ったところ、セルロースナノファイバーを複合化した透明シートとほぼ同等の透明性と、低線熱膨張率が得られることを確認したとのことで、これを活用することで、将来的に透明低熱膨張材料の生産性が高まると期待されると研究グループではコメントしているほか、化学修飾によって、吸湿性や樹脂との相溶性の改善にもつながると考えられるとしている。

製紙用パルプを化学変性後にシート化し樹脂と複合化したシート。LEDが光っているのが分かる