オートデスクは4月3日、製造業界向けに「デジタル プロトタイプ」アプリケーション各種の新バージョンの提供を4月7日より順次開始すると発表した。
今回、新バージョンとなるのは、3Dメカニカル設計用アプリ「Autodesk Inventor 2015/Autodesk Inventor Professional 2015」、リビジョン管理/セキュリティ管理「Autodesk Vault Workgroup 2015/Vault Profwssional 2015」、データ管理アプリ「Autodesk Vault Office 2015」、樹脂流動解析アプリ「Autodesk Simulation Moldflow Adviser 2015/Autodesk Simulation Moldflow Insight 2015/Autodesk Simulation Moldflow Synergy 2015」、熱流体解析アプリ「Autodesk Simulation CFD 2015」、強度/振動/熱伝導/疲労解析、非線形解析、弾性体を考慮した機構解析などを実現する「Autodesk Simulation Mechanical 2015」、点群データを編集/可視化するデスクトップアプリ「Autodesk ReCap/ReCap Pro/ReCap 360」などとなっている。
今回のバージョンアップで同社が特に押し出していたのが「Inventor」。同アプリの開発テーマは「ユーザーエクスペリエンス」、「モデリング能力」、「ワークフローの強化」の3つ。ユーザーエクスペリエンスについては、初めてのユーザーであっても使えるように、初めての起動時でチュートリアルコンテンツへのアクセスを選択することが可能なほか、オブジェクトなどについてもグラフィカルに表示されたり、ゲーミフィケーションのような仕組みが取り入れられており、初心者でも戸惑わないような工夫が施されている。
またモデリングについては、3Dモデリングを制作する際には2次元のスケッチを最初に作るためのオブジェクトとオブジェクトの関係性を示したり、解除モードの活用によりオブジェクトのリンクを解除し、好きな形状へと変更することなどが可能となったほか、ポリゴンモデラーのような形で、好きな形状を作り出すことができるようになったという。さらに履歴に従うことなく、形状を自由に変更することが可能なダイレクトモデリング機能として、何を編集したのか、という履歴機能を追加。これにより、移動した距離を変えたり、ダイレクト編集そのものを行わなかった時点に戻るといったことが可能となるという。
そしてワークフローの強化では、作業平面作成の拡張や、ねじれたスイープ形状の作成などが追加・拡充されたほか、大規模アセンブリを軽量に扱うことを目指した簡易モードの改良が行われ、利用可能な機能の拡充が図られ使い勝手が向上したとする。加えて、図面については、日本のユーザーからのリクエストが多い分野であるとのことで、今回のバージョンでは簡易モードを使って図面を作ったり、図面の指示記号をレイアウト上のどこに配置するか、といった2次元CADができる機能などを追加して自由度を高めたとする。
このほか、シートメタルについては、従来版から専用コマンドがあったが、ワークフローの強化として、後工程に渡すためのデータを簡単に生成することが可能になったとするほか、変換ツールも他社製品の最新バージョンに対応した形にアップデートされたという。
また「Vault」については、現在3つのラインアップが提供されているが、今回のバージョンでは、BOMの強化やコラボレーションの改善などが図られたとのことで、専業メーカーが提供するPDM(Product Data Management)と遜色のないレベルのものを提供できるようになったと自信をのぞかせるほか、AutoCAD LTにも対応できる唯一のPDMとなっていることを強調した。
さらに、リニューアルされた「Web Clientツール」については、CADユーザーではなく、その下流でデータを利用する購買担当者や生産技術者などが使いやすいような改善が施されたとのことで、それぞれの役割に応じて、見る情報を変えたり、固有の設定を展開することができるようになったとする。
このほか、Simulation製品については、「Mechanical」ではこれまでのバージョンではCFDでできることがMechanicalではできないといったことがあったとのことで、CFDで解析した結果をMechanicalに渡して共同解析を行う機能が温度分布などに拡大され、より詳細な解析を可能としたほか、計算を実行すると、その後の工程は計算を終了するまで待つ必要があったのをソルバマネージャにより、計算終了を待たずに別の作業を行うことができるようになったりしたとする。
また「Moldflow」では、従来からあったパラメトリックスタディ(最適化)の強化として、複数行った計算値を自由にオーダーを変更し、条件にあったものを並べ替えることなどが可能になったほか、今まではオーバーモールディングは1ショット目を計算して、2ショット目を計算する必要があった射出圧縮成形/圧縮成形解析を、1回で計算できるように改善するなど、より実作業に近い解析を可能にしたとする。
そして「CFD」については、液体から気体へといった相変化に対応。これにより。熱交換器やボイラーなどの計算にも利用できるようにしたほか、併せて冷媒や中に流れる物性プロファイルも追加した。また、ヒートシンクモデルも追加し、電子機器内の熱流体解析として、従来の詳細なモデリングデータを用意して境界条件を入れて計算するといった手間を省きつつ、高いパフォーマンスを発揮させることを可能にした。
最後となる「ReCap」だが、写真やレーザースキャナからのデータを取り込んで3D空間で利用可能とするアプリで、バージョン2014から追加されたもの。例えばものがあるが3Dデータがない。ReCap/ReCap Proはデスクトップ製品でReCap 360はクラウド製品となっており、ReCap/ReCap Proはレーザースキャナがメインの取扱い製品となる。複数のポイントで測定したデータをマージして1つの大きなデータとして取り出すことが可能なほか、レーザースキャナのデータを必要なところだけ抜き出して活用したりできる。
一方、ReCap 360は、レーザースキャナのデータや写真から合成したデータをチームでシェアするためのビューワーの機能や、複数の写真から特異点を見つけ出し、3Dのデータを作る機能などを有しているほか、Photo機能として、複数の写真から3Dモデルを作製し、それを既存の3Dモデルデータ上に組み込むといったことを可能にした。
なお同社では、今回のバージョンについて、製品の市場投入のために、外観デザインや環境性能、軽量化などの取り組みに多くの関係者がさまざまな形で関わって「おり、そうした関係者間での製品情報の効率的なやりとりなどを可能にする取り組みを盛り込んだとしており、これまで同社製品を使ってこなかった分野のカスタマに向けても積極的に活用を働きかけていくとしている。