鹿児島大学は、同大 学術情報基盤センター 升屋正人教授が率いる「高遅延インターネットにおけるTCPスループット向上システムの研究開発」プロジェクトにおいて、富士通の「FUJITSU Software Interstage Information Integrator V11.0(以下、Interstage Information Integrator V11.0)」の採用を決定したと発表した。

「FUJITSU Software Interstage Information Integrator」概要

本プロジェクトは、総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)地域ICT振興型研究開発の1つであり、インターネットを介した遠距離サーバ間での伝送速度低下を低コストで解消し、ICTの利活用による地域社会の活性化を大きな目的としている。

この技術が実現すると、1,500キロ以上離れた東京と鹿児島県大島郡与論町(以下、与論町)の間でのインターネットを活用した産業の活性化や、高速データバックアップによるデータ保全の向上、医療現場などでのインターネットを活用した検査画像の高速転送などが可能となる。与論町は、東京から1,500キロ以上離れているため、光ブロードバンドが整備されている状態でも、伝送速度は10Mbps程度にとどまり、ブロードバンドを活用した地域社会の活性化が進みにくい状況にある。

鹿児島大学が採用した「Interstage Information Integrator V11.0」は、TCP/IP通信のアプリケーション間のプロキシとして利用することにより、通信距離や回線品質による遅延の問題を解消し、ハードウェア性能に依存せず、低コストでの伝送速度向上を実現できるソフトウェアで、「回線事情やその時々のネットワーク状況に応じて最適な通信技術を自動選択」「WAN高速化装置は不要であり、ソウトウェアだけでデータ転送の高速化が可能」といった特長がある。

プロジェクトでは、4月1日より2015年3月31日まで、与論町と東京都内のデータセンターなどの間で、導入機器の伝送速度向上の仕組みの実証実験を行う。実験の目標は、インターネットを介した往復遅延時間が50ミリ秒の遠距離でのデータ転送において、1世帯あたり5万円以下の設備費用で、50Mbps以上のTCPスループットを実現する技術の研究開発。TCPスループットが向上するかどうかの検証は、「代理サーバ間通信」「通信区間分割」で行われる。

アプリケーション間の通信を高速化