東日本大震災から3年。今年も3.11に関連して多くのCSR活動が行われ、ソーシャルメディア上の共感を集めました。復興支援をきっかけに高まった人々の社会貢献への意識は、確実に企業のCSR活動を変化させています。

こんにちは、SMMLabの藤田です。

日本でのソーシャルメディアの普及を考えた時、2011年の東日本大震災が、その存在感と信頼性を決定付けたことは間違いありません。震災後、人々はソーシャルメディア上で共感を通じて繋がり、善意の輪を広げ、社会貢献への意識を高めていきました。そうした状況の中で、企業に求められる社会的責任の意味も変化し、慈善事業的な単なるイメージ作りのCSR活動は意味を持たなくなりました。

震災直後は多額の寄付や大勢のボランティアが大きな援助となりましたが、3年の時を経た今、なおも続く復興の途上においては、一過性ではなく継続的な支援が求められています。しかし、世の中の消費マインドが弱まっている中で、余剰な利益を提供し続けられる企業は多くありません。そこで持続的に支援するために「復興のために自社の本業で役に立てること何か」というように、本来の事業とリンクさせたCSR活動に取り組む企業が増えてきたように感じます。

そこで、東日本大震災の復興支援活動の中から、企業が事業を通じたCSRを実践している事例を見てみたいと思います。

◆Yahoo! JAPAN 東日本大震災 復興支援事業

http://shinsai.yahoo.co.jp

Yahoo! JAPANでは、東日本大震災発生直後から震災に関連する情報の発信や支援活動を続けていますが、被災地企業の名物をネット通販する「復興デパートメント」や、東北の水産品の新たなブランド価値創造を目指す「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」など、復興支援自体を事業化し、収益を上げることで支援の継続を目指しています。

◆セブン&アイ・ホールディングス 東北かけはしプロジェクト

http://www.7andi.com/kakehashi/

東北の農業・水産業・観光業の復興を支援する取り組みとして始められた「東北かけはしプロジェクト」今年3月、第8弾がスタート。協賛・参加219社と生産者と連携して東北食材を活かした約1,500アイテムの商品を展開しています。当初は3年の計画でしたが、今後も被災地・被災企業と協働した新たな支援を継続していくとのことです。

◆富士フイルム 写真でつながるプロジェクト

http://fujifilm.jp/support/fukkoshien/index.html

富士フイルムホールディングスは、各被災地の写真を救済する活動「写真でつながるプロジェクト」の他、自社工場のある福島県広野町で放射線の知識を生かした地域住民向けの放射線教育や復興シンポジウムを開催するなど、自社の“写真”製品やサービスを通じて、「現在」と「未来」、「被害を受けた地域」と「支援する地域」をつなげる活動を継続中。さらにこのプロジェクトは、自社の事業・サービスを復興支援に活用するアイディアをWEBサイトで広く求めるという、ユーザーイノベーションにも取り組んでいます。

◆キリンビール 「復興応援 キリン絆プロジェクト」

http://www.kirin.co.jp/csv/kizuna/

キリングループは、「地域食文化・食産業の復興支援」「子どもの笑顔づくり支援」「心と体の元気サポート」をテーマとした「復興応援 キリン絆プロジェクト」を継続中です。キリンビールでは昨年、風評被害を受ける福島県産の和ナシを農家から買い取り、独自に安全性を検査。これを使ったチューハイを販売し、売上げ1本につき1円を東北の農業の復興支援に当てています。

◆JTB 東北ふるさと課

http://www.jtb.co.jp/b2b/tohokufurusatoka/

JTBは震災直後から旅行会社としてボランティアをサポートするツアーを提供していますが、昨年夏からは本来の「旅」を通じて観光産業の復興を支援する「東北ふるさと課(化)」をスタート。被災地を「ふるさと」のように感じてもらうことをテーマに企画されたツアーは、参加者が被災地の現状を知り、未来に考える助けとなり、震災を風化させない取り組みとなっています。

◆JAL JAL東北応援プロジェクト

http://www.jal.co.jp/tohokuproject/

SKY BATON

http://www.jal.co.jp/tohokuproject/skybaton/index.html

JALグループは、震災直後から臨時便運航や機材の大型化による被災地への輸送力確保、医療・インフラ復旧のための支援者移動・支援物資の輸送などの本業に基づいた緊急支援に取り組んでいました。その後の復興フェーズでは農業支援や社員ボランティアのほか、「より多くのお客さまを東北へお連れする」、「社員自らが東北を訪れる」、「東北への関心をもっと高める」ことで、観光振興・産業振興に貢献する【JAL東北応援プロジェクト「行こう!東北へ」】を立ち上げ継続的に活動しています。

また、未来を築く学生にこそ今の東北を見てもらい、将来の東北を考え、行動を起こしてほしいとの願いから「SKY BATON」プロジェクトを発足。その第一弾として、公益社団法人 「助けあいジャパン」が主催し、全国の大学生が中心となり活動している「きっかけバス47」を支援しました。

※きっかけバス47 公式サイト
http://kikkakebus.tasukeaijapan.jp/

「きっかけバス47」は、震災を「風化」させず「風評」被害を少しでも軽減し、3.11の経験を防災・減災といった未来につなげていく活動として、全国47都道府県から合計約2,000名の若い学生を被災地に送り出そうというプロジェクトです。

SKY BATONプロジェクトの運営に携わる日本航空株式会社WEB販売部の関口氏に、JALが「きっかけバス47」を支援することになった経緯についてお聞きしたところ、このようないきさつを話してくださいました。

「学生ボランティアを支援したいという想いは初めからあったのですが、実際に支援を決定するまでには“何が本当に被災地に意味のある活動になるのか”と相当悩みました。実際に被災地を訪問し、参加している学生の声を聴いたり、地元のボランティアセンターの方にインタビューをしたり。さらには宮城県社協に話を聞き本当に求められているものは何なのかを調べました。いろいろ聞いていくと地元の方が“震災の風化”ということをかなり心配していることがわかり、そこを若者の情報発信力、横のつながりでなんとかできるのではないか…というアイデアが出てきました。そのタイミングでコンセプトのほとんどが共感できる「きっかけバス」の存在を知り、支援を申し出ました。」

この先10年後、20年後の日本を創っていく学生に、今の被災地の現状を自分ゴトとして体験してもらうこと。これは将来の日本の防災リーダーを育てるための種まきです。SKY BATONを通じて支援された参加学生一人ひとりが想いをつなぐバトンとなって、それぞれの地元で311の教訓を多くの人に伝え、地域の防災に活かしてくれる事こそが、 東北だけに限らず日本の未来へ向けた継続的な支援となるのではないでしょうか。

被災地が原状回復から未来への再構築を目指すためには、「経済」を回すためのビジネスの力が必要です。企業のCSR活動はますます、本来の事業の力で東北の経済をいかに活性化させていくことが出来るのかを問われるのではないでしょうか。そして、その活動が人々に共感されるかどうかは、ソーシャルメディア通じて自然と評価されていくこととなるでしょう。

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