小規模な小売業も容易に導入可能なWeb-EDIソリューションを出展

3月4日から7日にかけ、東京ビッグサイトにおいて「第30回 流通情報システム総合展リテールテックJAPAN 2014」が開催された。景気回復へ高まる期待、その一方で懸念される消費税増税後の反動などに対し、競争力を高めるための“次の一手”を見出そうとする小売・流通業者の熱い意気込みが、会場全体を包んだ。

そうした中、多くの来場者から一際高い関心を集めていたのが、データ・アプリケーションとリテイルサイエンスの合同ブースだ。データ・アプリケーションのマーケティンググループでグループマネージャーを務める大澤健夫氏は、「どなたも私たちの説明に熱心に耳を傾けてくださり、1日平均200名以上のお客様と名刺交換することができました。予想以上に大きな反響です」と手応えを語る。

同ブースで展示していたのは、データ・アプリケーションが開発したエンタープライズWeb-EDIシステム基盤の「ACMS WebFramer」、ならびに、その上に実装されるリテイルサイエンスが開発した「流通BMS対応Web-EDIテンプレート」だ。流通BMSとは、メーカー、卸、小売などの流通事業者が、統一的に利用できるEDIの標準仕様である。発注、出荷、受領、請求、支払などの商取引データを、インターネットを利用して高速かつ低コストで交換できることがメリットだ。

流通システム標準普及推進協議会が2013年に実施した流通 BMS 導入実態調査※によると、流通BMSに「対応済み」と回答した卸・メーカーはすでに43%に達しており、小売業についても前回調査(2011年)から10ポイント増えて26%に急伸している。この結果からも、流通BMSの普及は確実に進んでいると見て間違いはない

※出典:流通BMSニュース No.28-2013年12月号 第3回 流通BMS導入実態調査結果
http://www.dsri.jp/ryutsu-bms/info/028.pdf

とはいえ、中堅・中小規模以下の小売業にとって流通BMSに対応したシステム構築や運用の負担は重く、大手企業ほどには導入が進んでいないのが実情だ。 「今回私たちがメインで出展したのは、専任のシステム部門を持たない、比較的小規模な小売業にも導入可能なWeb-EDIソリューションなのです」とリテイルサイエンスの執行役員である増子大輔氏は語る。

基幹システムや取引先とのデータ連携で必要となるデータ分割、格納、抽出、フォーマット変換などの基本的なデータ加工処理がプリセット

業務担当者が直観的に理解できるテンプレートを活用

株式会社データ・アプリケーション マーケティンググループ グループマネージャー大澤健夫氏

流通BMSの導入が加速し始めた背景として、流通システム標準普及推進協議会のガイドラインによって、S-S(サーバ- サーバ)型およびC-S(クライアント- サーバ)型のEDIの補完手段としてWeb-EDIが位置づけられたことも大きい。インターネットを利用して低コストでEDIを実現する流通BMSは、2007年に仕様が公開され導入が進んできたが、業務現場には電話回線(ISDN)などを利用した旧来のEDIシステムが、まだまだ数多く残っている。そうしたレガシーなEDIに対応した通信機器や保守サービスを確保することが、いよいよ困難な状況になってきた。「EDIをモダナイゼーション(近代化)しなければ」という機運が業界全体として高まり、改めてWeb-EDIが注目されているわけだ。

「S-S型やC-S型のみでEDIを実現することが理想ですが、取引先にもその仕組みに対応した新たなシステムの導入や基幹システムの手直しなど重い負担を強いることになってしまいます。この課題を解決するのが、データ・アプリケーションが提供するACMS WebFramerなのです」(大澤氏)

株式会社リテイルサイエンス 執行役員 システムソリューショングループ 増子大輔氏

もっとも、ACMS WebFramerは基盤ソフトウェアであり、実際の業務要件に適用するためにはさまざまなアドオンや設定変更が必要となる。そこで登場したのが、流通BMS対応Web-EDIテンプレートだ。

「Web-EDIテンプレートは、リテイルサイエンスが長年にわたり培ってきた小売・流通業界の業務ノウハウをパッケージ化したものです。例えば、流通BMSの主要6メッセージ(発注、出荷、受領、返品、請求、支払)ごとの状況確認やデータ入力、伝票印刷を、アイコンボタンを押すだけで簡単に行うことができます。システムの専任担当者でなくとも画面を見るだけで何ができるのか、どう進めていけばよいのかを直感的に理解できるため、一連の業務をスムーズに処理できるのです」(増子氏)

流通BMS対応を促進するサービスとラインナップの拡充

「FAXや電話で行っている発注処理をEDI化したい」「取引先に負担をかけずにEDIを拡大したい」「伝票/検品/請求レスを実現したい」「通信を高速化し、リードタイムを短縮したい」など、実際にさまざまな課題を抱えた小売・流通業の担当者が、データ・アプリケーションとリテイルサイエンスの合同ブースを訪れ、解決のためのヒントを掴んでいった。流通BMS対応Web-EDIテンプレートでは、発注から支払までの業務に加え、取引先においてもデータを一括して処理する「ダウンロード」、「アップロード」機能を提供。さらに、発注や出荷などを外部ファイル(標準CSV 形式)として相互に交換できることや、ピッキングリストなどの帳票出力、手書伝票処理用のマスタ登録など、取引先業務を支援する様々な機能が組み込まれている。

また、小売側機能としてデータ連携処理もプリセットされており、基幹システムとのシームレスな連携が可能なEDIシステムを短期間で構築できる。そして、自社仕様に合わせて画面の表示項目を自由に変更できることや、商品情報や販売実績の交換など様々な業務も追加開発できることも、多くの来場者の興味を引き付けたポイントだ。

「今後も両社の緊密な協業のもと、Web-EDIだけにとどまらず、様々な形態で商取引データをやり取りする仕組みなど、小規模な小売・流通業がより手軽に導入できるソリューションのラインナップを拡充する予定です。また、流通BMSに対応したさまざまなシステムを、クラウドサービスとして複数の企業に提供するSaaS事業者への適用も積極的に進めていく計画です」と大澤氏はアピールする。

購買から販売、情報共有まで幅広い業務をカバーする次世代のEDIが、小売・流通業におけるビジネスのあり方を大きく刷新しようとしている。