ケースレーインスツルメンツは、高電圧デバイス/材料のテストや高エネルギー物理学/材料科学向けに最適化された高電圧電源「2290」シリーズとして、「2290J-5型/2290-10型」2機種を発表した。

同製品は、パワー半導体素子の高電圧ブレークダウンテストが可能な高電圧電源で、エネルギー変換効率の高い発電/送電システム、ハイブリッド/電気自動車など、グリーン化のために設計されたSiCやGaNのようなワイドバンドギャップ材料のデバイスのテストに適している。通信インタフェースを標準搭載する他、保護回路モジュール、より小さな出力リップルなどを備える。

具体的には、他社の10kV印加ソリューションは、完全な半導体テストシステムの本体を購入する必要があり、それに電圧エクスパンダを追加するため、「2290-10型」ソリューションよりも10倍以上のコストがかかる。これに対し、「2290」シリーズは、スタンドアロンの電圧印加機器であり、高電圧テストソリューションの構築をリーズナブルに行うことが可能。最大電圧が5/10kVで、最大3kVの印加が可能な同社のソースメータ(SMU)「2657A型」を補完する。また、10kVまでのテストを必要とする、より複雑なアプリケーションには、高電圧電源「2290」シリーズを半導体特性評価システム「4200-SCS型」やパラメトリックカーブトレーサを含むテストシステムと組み合わせて使うことが可能。これにより、微小電流測定分解能が1μAから0.1fAまで小さくできるため、より多くの試験に対応できるようになる。

さらに、高感度測定器を使ったリーク電流や高抵抗率測定では、出力ノイズの小さな高電圧電源が必要となるが、高感度測定器を使い、ピコアンペアレベルの電流確度を測定できる。「2290-10型」の最大出力リップルは1Vrms未満で、「2290J-5型」は100mVrms。「2290J-5型」には2つの内部フィルタが搭載されており、出力リップルを業界最小の3mVrmsまで小さくできるという。

この他、「2290」シリーズと同じテストシステムに組み込まれた低電圧機器を過電圧から保護するため、保護回路モジュール「2290-PM-200型10kV」を同時に発表した。同社のソースメータのような低電圧機器と「2290」シリーズを同じ高電圧テスト回路で使う場合、被測定デバイス(DUT)がブレークダウンし、電気的に短絡状態になったとしても、保護回路モジュールはこの低電圧機器の入力端子間を最大200Vで確実にクランプする。高電圧電源、保護回路モジュール、高感度測定器、そして同社のソフトウェアとアクセサリにより、高電圧テストでの安全環境作りに必要な全ての要素が提供される。「2290」シリーズは、高電圧テストフィクスチャの蓋が閉じていないときには、内蔵のインターロック回路により電圧出力をオフにする。加えて、「2290」シリーズに標準装備されているIEEE-488インタフェースは、高電圧自動テストシステムの構築を容易にし、高電圧機器をリモート制御することにより安全面も強化できる。また、テストシステム開発を迅速かつ容易に行えるように「2290」シリーズ用のLabVIEW、IVIドライバも用意されている。

そして、高電圧出力に加え、「2290J-5型」は最大5mA(25W)、「2290-10型」は最大1mA(10W)の電流出力が可能。両機種とも電流測定分解能は1μA。片方のディスプレイに、電圧と電流出力値を表示し、もう一方のディスプレイには設定電圧、電圧リミット、電流リミットまたは電流トリップのうち1つを表示する。さらに、「2290」シリーズのアプリケーションには、高電圧ブレークダウンテストに加え、高電圧素子/材料テストを含む高エネルギー物理学、絶縁テスト、高電圧抵抗率測定などがある。これらにより、放射特性/効果の研究、粒子線の研究・使用、材料構造研究に関わるアプリケーションにも寄与するとしている。

ケースレーインスツルメンツの高電圧デバイス/材料のテストや高エネルギー物理学/材料科学向けに最適化された高電圧電源「2290J-5型/2290-10型」