狭い土地・住居に多くの人が暮らす日本。建築雑誌を見れば狭小住宅の特集、インテリア雑誌では収納やデッドスペースの活用術などの記事が多く載せられています。つまり「狭いからこそ発達してきた」部分や便利さも多いわけですが、そんな住宅に住んでいる外国人のみなさんはどう思っているのでしょうか。
今回は、日本在住の外国人20名に「日本の住宅に住んでみて、母国とは違って「便利」と感じたところ」を聞いてみました。
■お風呂。自動的に沸かすことができ、追い炊きもできる。(スウェーデン/40代後半/女性)
■お風呂の設備(温度を設定できることなど)。お風呂とトイレが別なところ。(イタリア/30代後半/女性)
■デジタル浴室(スペイン/30代後半/男性)
■お風呂のお湯の温度が調整できること。(インドネシア/30代後半/男性)
■お湯が暖かく、シャワーの水圧もちゃんと保たれている。(中国/30代前半/女性)
■風呂にシャワーと浴槽の両方があること。(ドイツ/30代後半/男性)
■ユニットバスは壁も全体も洗いやすくてよいです。ふすまも便利です。(ロシア/20代後半/女性)
最も多く集まった回答が「お風呂」や「シャワー」に関するものです。入浴はシャワーのみで済ませる国が多い中で、浴槽に浸かる行動は外国人にも注目の的。実は、この文化がトイレ・バスを別に置く仕組みを生み、温度設定や追い炊きなどの自動制御機能を進化させた要因でもあるのです。2010年にユニリーバ・ジャパンが外国人男性に行った母国と日本のお風呂文化の比較アンケートでは、約70%が「日本が進んでいる」と答えており、それも頷けます。
また、シャワーの水圧もポイントのひとつ。日本人が海外旅行に行くと弱さや不安定さに驚きますが、来日した外国人にすればその安定した水圧と水量こそが驚きになるようです。
■こたつは母国にはないのでとても便利です。(フランス/30代後半/男性)
海外に多いセントラルヒーティングなどの暖房器具は、蒸し暑さ対策を重視した伝統的な日本家屋には向かないため、日本ではそこまで普及していないのが現状です。一方、電熱で足元を暖めるこたつは、狭い部屋でも安全に利用できる上に各部屋に移動も可能、布団さえ外せば机として活用できる手軽な暖房器具。地面に座って使う仕組みのため(掘りごたつ除く)、椅子文化のヨーロッパの方には珍しく映るのでしょうね。
■部屋が冬でもとても暖かく、多くのトイレは暖める機能があってよい。(ベトナム/30代前半/女性)
暖房便座や温水洗浄などの機能を持つ多機能トイレは、まさに日本ならでは。1960年代からTOTOが開発し、今では多くのトイレに設置されています。現在ではアジアや中東地域、アメリカなどで販売されていますが、水の安全性の高さと軟水かどうかが影響することもあり「日本ならでは」の独走体制は依然として続きそうです。
■狭い台所にいろんな発明があります。(オーストラリア/40代前半/男性)
■狭くて掃除機がすぐに終わることです。(アメリカ/30代後半/男性)
■コンパクト。(ペルー/40代後半/男性)
住む土地の少なさに比例し、狭い住居が大半の日本。それが逆に「コンパクトさ」として長所にあげられているのが興味深い回答です。狭くても快適な暮らしを実現させようと追求することで生まれた多くの工夫が、欠点を長所に転換しているのかもしれません。
■押入れがあること。(トルコ/20代後半/女性)
■各部屋に押入れがあるところ。(韓国/40代後半/男性)
■押入れという存在が素晴らしい。下駄箱があるのも感動的。すべてがコンパクトにまとめられていて無駄な空間が無い。(スリランカ/50代後半/男性)
押し入れは昔から布団を収納する場所として存在してきました。布団を出し入れすることで、昼は生活の場と夜は寝室とふた通りの使い方が可能になります。「押し入れ」は、先に挙げた狭い空間を無駄なく使うための工夫のひとつなのです。
■隠し家具がある(いすなのにタンスなど)(インドネシア/30代前半/女性)
こちらも、狭い住居空間ゆえに生まれてきたアイデア。回答は恐らく収納ベンチのことでしょう。ほかベッド台の下側を収納に活用できるベッドなどもあり、できるだけデッドスペースを作らない、空間を有効活用しよう、という考え方が家具にも反映されていることがわかります。
■ベランダ(ブラジル/50代前半/女性)
■地震に強い(シリア/30代前半/男性)
それぞれ、独自の視点による回答です。ブラジルでは景観を損ねるという理由からベランダで洗濯物を干すことができないそう。ベランダがない建物も多いため、開放的かつ実用的なベランダの存在があがったのかもしれません。一方、耐震性に関しての回答は、震災以降は建物の強度や構造がニュースなどで取り上げられることも多く、自らの住居を通してそのことを実感されているのでしょう。
制限を克服していかに快適に暮らすか。そんな追求から生まれてきたたくさんのアイデアが、日本の住宅には詰まっています。今や世界的にもそれほどの差がなくなってきた衣食住の中で、日本らしさが未だ強く見られる部分なのかもしれません。