富士通は3月18日、同社のヘルスケア分野への取り組みに関する説明会を開催した。
同社では今後、高齢化社会を迎えるにあたり、国内のみならず、海外でもヘルスケア市場が拡大することを見据え、昨年の12月21日、社長直轄の社内横断組織である「未来医療開発センター」を設立した。
このセンターは、健康増進、重症化予防、疾患の早期発見、新薬創出、個別化医療等の実現にICT利活用を検討し、最先端の研究機関と現場密着型事業開発を行うことと、新技術の研究開発機能を統合、スピード強化を図り、今後の診断サービス、機器ビジネスの拡大をねらうこと、および、大学医学部などのアカデミア・研究機関、製薬企業、治験実施機関、医療機器ベンダー等と社外連携・協業を推進することだ。
富士通 執行役員 合田博文氏は、「未来医療開発センター」の役割について、「これまでのいろいろな研究部門を統合し、未来医療開発センターがヘッドクォーターとなって、全体をコントロールしながら事業を進めていく。これにより、これまで行ってきた事業に加え、大学や研究機関との密接な関係強化を図っていく」と述べた。
同社では、これまでのヘルスケア事業に加えて、未来医療開発センターの新しいビジネスとして、生体シュミレータ、1細胞診断、診断サービス機器ビジネス、バイタルセンシング、IT創薬などの長期的技術開発を含め、今後は医療次世代電子カルテシステム、医療ビッグデータ、治験・創薬における新たな情報活用基盤の構築に注力していくという。
次世代カルテシステムの開発に向けては、診断情報に加え、ゲノム情報や日々の健康・生活情報のデータも統合し、次世代の医療データベースを構築。これらのデータを活用しながら、最適な診断、指導、治療の支援を行っていくという。
次世代カルテシステムの提供時期について、未来医療開発センター シニア・バイス・プレジデントの佐藤英暢氏は、「2-3年では無理だが、5-10年という長期スパンで考え、提供できる部分から提供していく」と述べた。
医療ビッグデータでは、次世代の医療データベースをもとに、個別化医療、再生医療、先制医療、診断支援・研究・創薬に活用するビジネスを創出していく。
創薬分野では、スーパーコンピュータなどを活用し、コンピュータ上で医薬候補分子の設計などを行っていく。この分野では、すでに東大先端科学技術研究センター、国内製薬メーカーと共同で2011年から共同研究を行っており、2014年からは新規医薬品の実現に向けたステップアップを行っていく。
そして、同社では2014年度からこれら新たなビジネスの売上げを計上し、2018年に700億円規模まで拡大する予定だ。