昨今のx86サーバーに対するニーズは、「エンタープライズ分野(企業内)における利用」と「データセンター分野(クラウド・ベンダーなど)における利用」という2つに明確に分かれている。より安価に、より高密度に、より省電力に、というデータセンターのニーズに対し、エンタープライズ分野の特長的なニーズは、オープン性とサーバー・ベンダーによる付加価値のバランスと言える。インテルのXeonプロセッサー E7 v2ファミリーを搭載したx86サーバーでありながら、高速や俊敏、高い耐障害性という特長を持つIBMの「第6世代エンタープライズX-アーキテクチャー(X6)」は、特にエンタープライズ分野におけるビジネスの競争優位性や差別化に有効だ。

第6世代、13年の実績を持つIBM X6アーキテクチャー

IBMが投資・開発してきたエンタープライズX-アーキテクチャーは、2001年に第1世代が発表され、現在の第6世代リリース時点で13年の歴史と実績がある。基本的にはインテルのプロセッサーのロードマップに対応して世代が変わっており、各世代でさまざまなベンチマークの記録を塗り替えてきた。

IBM エンタープライズX-アーキテクチャー

その一方、過去10年のITシステム考えた場合、クラウドという大きな変革があったものの、企業内で導入・運用されているシステムの使われ方はあまり大きく変化していない。日本アイ・ビー・エムのシステム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 製品企画・営業推進 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト、東根作成英氏は、「IT業界がテクノロジーの進化によるサーバーの性能を十分に生かすことができる仕組みを構築できなかったということではないかと考えています。たとえばサーバー間をつなぐネットワークは、既に100Gbpsのテクノロジーが見えているにもかかわらず、多くのお客様で未だ1Gb Ethernetが利用されているのが現状です。価格の問題はあったにせよ、サーバー間インターコネクトが高速化することを前提としたシステムになっていないという部分は否めないと感じています。」と語る。

ネットワークの高速化により、サーバー間をつなぐネットワークはコンポーネント間をつなぐインターコネクトに進化し、より柔軟にITリソースを活用できるようになると考えられている。IBM X6の徹底したモジュラー構造は、そうした未来の先取りともいえる構造を有している。

これまでのx86サーバーは、CPUやメモリ、PCIスロットなどが1枚のマザーボード上に搭載されていた。X6アーキテクチャーを搭載した最初のサーバー、System x3850 X6では、CPUとメモリをサーバーのマザーボードから切り出し、「コンピュートブック」と呼ばれるコンポーネントに分割。PCIスロットは「プライマリーI/Oブック」と2つの「I/Oブック」として、RAIDコントローラーとストレージは「ストレージブック」として、同じく切り出されている。これらを互いに接続するのは、x3850 X6筐体内のミッドプレーンだ。インターコネクトとなるミッドプレーンを介してコンピュートブック、ストレージブック、I/Oブックが、互いにQPIやPCI-Expressで高速に接続される形態となっている。

「コンピュートブックとストレージブックは筐体の前面から、I/OブックとプライマリーI/Oブックは筐体の背面から、それぞれ必要に応じて追加・交換することができる設計になっています」(東根作氏)

IBM System x3850 X6の構造

高速、俊敏、自己回復力がIBM X6のアドバンテージ

X6のアドバンテージは「FAST(高速)」「AGILE(俊敏)」「RESIRIENT(自己回復力)」の実現である。

高速という特長の柱は、IBMとサンディスク、Diablo Technologiesの3社で共同開発した「eXFlash メモリー・チャネル・ストレージ」と呼ばれる技術の搭載だ。eXFlash メモリー・チャネル・ストレージは、DIMMスロットにフラッシュメモリであるeXFlash DIMMを搭載することで、PCI-eベースのフラッシュ・ストレージに比べ約3倍の低レイテンシーを実現できる。サーバーサイド・フラッシュとして市場に存在する様々な製品より、書き込みにかかる遅延を少なくすることで、ログの書き込みにも高速性を要求するインメモリーDBなどの用途において、パフォーマンスを発揮する。

また、IBM X6搭載サーバーにはインテルの最新のプロセッサーである「インテル Xeon プロセッサー E7 v2 ファミリー」が搭載されている。東根作氏は、「インテルの最新ハイエンド・プロセッサーを搭載することで、コア数の拡大や帯域幅の増大による高速化が期待できます」と話す。また、CPUとメモリ、ストレージ、PCIスロットをコンポーネント化したブック型を採用したことで、最小限のシステム構成から必要に応じた拡張ができるので、IT投資の最適化が可能になる。

日本アイ・ビー・エム株式会社 システム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 製品企画・営業推進 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 東根作成英氏

「これまでのサーバーは、ピーク時に合わせたプロビジョニングが必要でした。ブック型を採用したことで、まずは最小構成で導入し、必要に応じて拡張することができます。ブレード型サーバーでも似たようなイメージで拡張することができると思われるかもしれませんが、ブレード型ではサーバーの台数を増やすことで水平方向に拡張するスケールアウト型です。X6のブック型は、CPUとメモリ、ストレージ、I/Oという単位で、必要に応じて垂直方向に拡張できるスケールアップ型になっています。OSなどの再インストールを行わずに、必要なリソースを逐次追加できるという点で、俊敏性に優れた基盤と言えるでしょう」(東根作氏)

また、X6のモジュラー構造はこれまでのリプレースの概念も変える。これまではCPUやメモリの世代が変わるごとに、新しい筐体を調達し、OSやミドルウェアを設定して、システムをリプレースすることが必要だった。アーキテクチャーが代わることでOSなどのアップデートを併せて行う必要が出たり、さらにはアプリケーションを改修も視野に入れる必要があった。X6では使用している筐体はシリアルナンバーも含めそのままで、コンピュートブックのみをリプレースするという選択肢が生まれる。同様に現在はSAS/SATAで接続されるストレージブック内のHDD/SSDインターフェースをPCI-Expressベースに変更したり、I/Oに使用しているネットワーク・インターフェースをI/Oブックごと交換するなど、様々な形で既存の投資を生かし、全体のIT投資額を削減することができるのだ。

自己回復力の面では、インテルのプロセッサーのRun Sureテクノロジーによる優れた可用性を活用できる。加えて、IBMが独自に実装したX6用ファームウェアにより、OS起動に使うプロセッサーの自動フェールオーバーやメモリページ単位で発生する修復可能エラーをトラッキングし、閾値を超えた場合にリタイアさせるようOSやハイパーバイザーに伝達する機能などをハードウェアで実現。ハードウェア障害が起きることを前提に、「可能な限り自己修復しながらサービスを落とさない」仕組みを持っている。また、仮想化基盤における自己回復力を実現するため、「IBM Upward Integration for VMware vSphere V3.0」により、事前障害予知(PFA)機能に基づいたポリシー・ベースでの処理(vMotionなど)を設定する機能や、仮想マシンを停止することなくクラスター内のサーバー・ファームウェアを順番にアップデートする、ローリング・ファームウェア・アップデートなどの機能を提供する。同様の機能が今後Hyper-V環境向けにも提供される予定だ。

X6搭載IBM System x3850 X6のアドバンテージ

X6を活用するシステム管理者のメリットについて東根作氏は、「自己回復力と銘打っている通り、単にハードウェアの耐障害性を向上させるというより、これまで人手に頼っていた障害時の対応を事前定義し、自律的に対応させることで仮想マシンを停止させないオペレーションを実現することがメリットだと考えます。X6搭載サーバーに限らないのですが、IBMのx86サーバーは、事前障害予知の機能が充実しており、“24~48時間以内に故障する”というアラートを管理者に送信することができるのですが、次ステップとなる対応策をポリシーとして設定しておくことで、サービスとしての可用性を高めることができます」と語る。