京都大学(京大)は、うつ・脳卒中・パーキンソン病などの最新治療法である「電磁気刺激」に、なぜ持続効果があるのかを脳システムの観点から明らかにしたと発表した。
同成果は、同大医学研究科附属脳機能総合研究センターの美馬達哉 准教授、同 福山秀直 教授、福島県立医科大学医学部神経内科学講座の阿部十也 特別研究員(元京大医学研究科附属脳機能総合研究センター研究員、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部流動研究員)らによるもの。詳細は「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」オンライン速報版に掲載された。
脳局所に電磁気刺激を与える「電磁気刺激法」は、刺激部位の脳機能を促進/抑制させる動物実験手法としてすでに確立された技術で、この20年でヒトへの応用が広がり、精神神経難病の最新治療法として注目されるようになっているものの、全脳レベルでの電磁気治療法の機序の理解は進んでいないのが現状であった。
そこで研究グループは、磁気共鳴画像(MRI)装置内で行える電磁気刺激装置を開発し、電磁気刺激終了直後から刺激効果の評価を全脳レベルで行うことを可能にし、刺激効果の指標に、神経活動の状態を鋭敏に捉える「水拡散強調画像法」を用いて、刺激効果を全脳レベルで経時的に観察したという。
その結果、刺激直後、刺激効果は刺激部位だけでなく、直接刺激を受けていない遠隔部位でも認められたほか、刺激部位を含むネットワークでは、その後も刺激効果の遷延化が認められた一方、刺激部位とネットワークを組んでいなかった部位では刺激効果がすぐに消失することが確認されたという。
これらの結果は、刺激部位を含む複数の領域が協同することで刺激効果が保持されることを示すものであり、研究グループでは、これにより、電磁気治療の持続効果が脳システムレベルで明らかにされたほか、「水拡散強調画像法」でネットワーク評価を行うことで、治療前に治療効果を予測する可能性がでてきたとしており、今後の治療評価法の開発につなげたいとしている。