新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は3月17日、マレーシア政府との共同事業として進めてきた、ヌグリ・スンビラン州バハウのセメント工場内に新設した石炭代替燃料利用設備を用いて、燃料である石炭の一部をバイオマス(パーム油搾りかす)および産業廃棄物(廃タイヤなど)に代替することで、石炭の使用量を25%削減できること、ならびにそれに伴う温室効果ガスの削減が可能であることを実証したと発表した。

今回のモデル事業は、日本政府とマレーシア政府の共同事業として実施されたもので、NEDOとマレーシアのパームオイル庁、ゴム工業庁およびその監督官庁であるプランテーション・商品省の協力により実現され、マレーシアCIMAのセメント工場に、使用済タイヤやパームオイルミルで発生する搾りかすなどの廃棄物を石炭の代替燃料として投入する設備が設置された。

同設備は、「廃タイヤ、バイオマス投入システム」、「塩素バイパスシステム」、「TCS(Taiheiyo Coating Solution)システム」の3つのシステムで構成されている。「廃タイヤ、バイオマス投入システム」は車両用使用済タイヤやパーム空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、パーム椰子殻(PKS:Palm Kernel Shells)などを回収・運搬の上、投入システムを用いて石炭代替燃料としてキルンに投入するシステムで、「塩素バイパスシステム」は、廃棄物をキルンまたは仮焼炉で燃焼させる際、廃棄物から発生する塩素を含むダストを分離バイパスし、ダストの付着によるサスペンションプレヒーター内の機能低下を防止するもの、「TCSシステム」は、原料粉末の一部を窯尻に投入し、キルン(回転窯)排ガス中の亜硫酸ガスなどを凝縮固化することで、それらのプレヒーター側面への付着・成長を抑え、安定したキルン運転を可能にするものとなっている。これらのシステムは、NEDOの委託を受けた太平洋エンジニアリングが開発したものだという。

なおNEDOでは今回の成果について、日本の優れた技術がマレーシアで普及し、同国の化石燃料消費量の低減と廃棄物利用による環境改善に貢献することが期待されるとコメントしている。

廃タイヤ投入設備

パーム油搾りかすの一種(EFB)投入設備