現在、多くの企業ではITシステムが複雑化し、信頼性の低下や保守運用コストの増大など大きな課題を抱えている。そのため、より戦略的な投資を行うことができず、ITを企業の競争力強化に活用できない状況にある企業も多い。こうした課題を解決するのが、IBMの提唱する、スマートなITインフラを実現するための次世代ITビジョン「Smarter Computing」である。

Smarter Computingの“データ”にフォーカスしたIBM X6

Smarter Computingには、「クラウド」「データ」「セキュリティ」という3本の柱があるが、2014年1月にIBMから発表された「第6世代エンタープライズX-アーキテクチャー(X6)」では、この中で特に“データ”にフォーカス。基幹システムを含めた膨大なデータからリアルタイムに洞察・知見を獲得し、適切かつ迅速な行動・意思決定を行うための基盤の実現を目指している。

IBMのITインフラ・ビジョン”Smarter Computing”

企業システムにおけるデータ処理には、「基幹データ(OLTP)」と「アナリティクス」の大きく2つの処理があり、ニーズはそれぞれで異なっている。日本アイ・ビー・エムのシステム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 製品企画・営業推進、システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト、東根作成英氏は次のように語る。

日本アイ・ビー・エム株式会社 システム製品事業本部 x/Pureセールス事業部 製品企画・営業推進 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 東根作成英氏

「基幹データには、サービスを止めない可用性や堅牢なセキュリティ、例えば5年を超えるような長期間の利用、移行の容易性など、“堅牢性と投資の保護”が求められます。一方、アナリティクスは、近年、非常に注目されている分野で、すでに欧米の企業ではビジネスを成長させる武器と位置づけられています。そのため“スピードと俊敏性”が必要です」

以前は、基幹データを安価なx86サーバーで処理することに抵抗を感じる企業が多かった。しかしx86サーバーの性能が飛躍的に向上した現在、基幹データをx86サーバーで処理する企業は増えている。IBMが報道機関向けX6説明会で引用したIT専門調査会社IDC Japanの調査では、基幹データ処理の4割がx86サーバーで、そのうち6~7割が仮想化環境であるとされている。

またアナリティクスでは、迅速な経営判断とビジネス展開、成長に応じた拡張などが求められている。東根作氏は、「ソーシャルやモバイルの普及拡大で、膨大なデータが生み出されています。この非構造化データを、大規模データのソフトウェア基盤Hadoopなどで分散処理、整形し、基幹システムのデータと結び付けてリアルタイムに近い分析を行うためには、最も普及している記憶装置である、ハードディスクのスピードがボトルネックの一つとなっていました」と話す。

そこで近年劇的に進化しているのが、インメモリーデータベース技術やフラッシュ技術である。東根作氏は次のように語る。「基本的にX6は、構造化データの効率的な処理を目的としたサーバーです。しかし、IBM PureData System for Hadoopなどを利用して抽出したデータを、エンドユーザーが分析するためのフロントエンドのサーバーとしても利用できます」

東根作氏は、「基幹データ処理とアナリティクス処理の課題を解決するという2つの側面において、パフォーマンス、柔軟性、俊敏性が高く、自己回復力を搭載したITインフラが必要です。これらの条件を満たすアーキテクチャーとしてX6は、注目に値すると自負しています」と話している。

X6のビジネス価値を多くの企業に啓蒙

X6が効果を発揮するのは、データ処理の分野である。データ処理のためのITインフラ構築は、実は非常に複雑で、かつハードルが高い。特に中堅規模の企業では、リレーショナルデータベースが社内に分散しており、データを統合できていない状況にある。データが集中管理されていないために、データの分析も困難である。

企業には、分散したデータベースを統合したいというニーズがあるが、データを統合すると、膨大なデータを処理しなければならないために、ストレージの速度がボトルネックになる。X6では、低遅延で高いI/O処理性能を実現するフラッシュ技術であるeXFlash DIMMによりストレージの速度の問題を解決することができる。

東根作氏は、「現在公にしているeXFlash DIMMを使用しない業界標準ベンチマーク結果でも、X6はシステム全体で前世代比で約2倍の性能を記録しています。つまり、これまで4台のサーバーが必要だったデータ処理を、2台で稼働させることができます。eXFlash DIMMを用いることで、共有ストレージを使用しない場合はもちろん、IBM FlashCache Storage Acceleratorというフラッシュ・ストレージを既存外部ストレージのキャッシュとして使うソフトウェアを使った場合でも、これまでより高速なデータ処理が可能になります。リアルタイムに近いアナリティクス分析ができるようになり、より効果的な意思決定が可能になります」と話す。

既存のサーバーをX6にリプレースすることで、高い処理性能だけでなく、可用性、耐障害性を確保できるので、明らかなコスト削減効果が見込める。X6では、モジュラー・デザインの採用により、筐体をリプレースすることなく、次世代のインテル・プロセッサーをサポートすることも可能となり、既存の投資を長期に保護することができる。

アナリティクスと基幹データ処理の両方にフォーカスした新アーキテクチャー

IBMは2012年4月にブレード型サーバー「IBM Flex System」をリリースしている。これはIBMの知見を統合したエキスパート・インテグレーテッド・システム IBM PureSystemsのサーバー・コンポーネントとして開発された製品で、シャーシやサーバーを個別に購入できる単体製品としても提供されている。このIBM Flex Systemは、発売当初より、10年先の2020年代を見据えたx86サーバー製品であり、投資の保護に寄与する、とIBMは訴えている。

東根作氏は「この先10年のテクノロジーの進化を詳細に、かつ正確に予測することは誰であっても困難です。しかしIBM Flex Systemは、テクノロジーの進化に柔軟に対応できるよう、広大な帯域を利用できるようにし、余裕のある冷却・電力供給が行えるよう設計されています。2014年中頃にはこのIBM Flex SystemでもX6アーキテクチャーを利用することができるようになります」と話す。

X6アーキテクチャーが搭載されたサーバー製品IBM System x3850 X6は、最小構成で130万円からという価格であり、コモディティ化されたサーバーを想定した予算でシステム化を考えている企業にとっては高価に見える。しかし東根作氏は、「初期導入コストだけではなく、総保有コストやシステム導入によって得られるビジネス価値や企業競争力も加味したX6の価値について、積極的に啓蒙していくことが必要だと感じています」と話す。

東根作氏は、「新製品はリスクが高いと思われる方も多いと思いますが、X6を既にご発注いただいたあるお客様は、X6を2001年より実績のある第6世代の製品と位置づけていただいていると聞いています。周囲が使っているから同じものを選ぶのではなく、ITを企業の競争力強化の手段として捉え、新しいものを積極的にご採用いただける様、少しでも多くの企業ユーザーに伝えていくことが重要だと思っています」と語る。