理化学研究所(理研)と高輝度光科学研究センターは、兵庫県・西播磨にあるX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA(さくら)」で使用するX線イメージング検出器「マルチポートCCD検出器」の開発に成功した。理研放射光科学研究センターのデータ処理系開発チームの初井宇記(はつい たかき)チームリーダーと高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室の亀島敬(かめしま たかし)研究員らの国際共同研究による成果だ。3月14日付の米科学誌Review of Scientific Instrumentsオンライン版に発表した。

写真1. 開発されたX線イメージング検出器「マルチポートCCD検出器」

写真2. 開発したX線イメージング検出器によるタンパク質構造解析実験の様子

X線自由電子レーザー施設SACLAは、強力なX線レーザーを試料に照射して、散乱、透過してくるX線のパターンをX線イメージング検出器で測定する。高い精度で撮影するには、強い放射線耐久性、効率的な電荷回収、高速測定などの課題があった。

共同研究グループは、CCD(電荷結合素子)の先端技術を駆使して、これらの課題を解決する「マルチボードCCD検出器」を開発した。SACLAの過酷な放射線環境下、X線光子を広い面積で1個以下の微弱な信号から数千個を超える強い信号まで、同時かつ正確に測れるようになった。毎秒60回撮像するように設計し、短時間に大量のデータを取れる。さらに100ミリ×100ミリの大面積イメージ領域を実現するため、大型センサーを8個並べる構造とした。X線自由電子レーザーの利用研究の向上に役立つと期待されている。

この新検出器は「SACLAのすごい目」といえる。SACLAを利用する実験の基幹技術で、既に8割以上の課題で活用されている。SACLAは理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本初のX線自由電子レーザー施設。2011年に完成し、12年に利用実験が始まり、タンパク質の構造解析などに使われている。このマルチポートCCD検出器は当初から使われていたが、実験を重ねながら、徐々に改良してきた。第1段階の開発がようやく終わり、評価が完了した。 研究グループは「検出器を動かすための電気回路や、センサーを並べるのに苦労した。これからも、第2、第3段階と検出器の性能を上げて、SACLAの実験を充実させていきたい」としている。