東日本大震災から3年。南海トラフ巨大地震などへの高層ビルの備えは急務である。大規模な振動台実験によって、鉄骨造18階のビルが大地震の揺れで崩壊するまでの挙動を、中島正愛(なかしま まさよし)京都大学防災研究所教授らは、小堀鐸二研究所、防災科学技術研究所、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店と共同で検証した。兵庫県三木市にある防災科学技術研究所の実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を使った実験で、研究グループは「高層ビルが大地震の揺れによって壊れる際の新知見が多く得られた。今後の高層ビルの設計や安全性の評価に役立つ」と意義を挙げている。
この実験は、文部科学省からの委託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト-都市機能の維持・回復に関する調査研究」の一環として実施された。実験では、1980~90年ごろに設計施工された鉄骨造18階建ての3分の1の試験体(平面5×6メートル、高さ25.3メートル、重さ約420トン)を製作し、E-ディフェンスで、南海トラフ三連動地震を考慮した地震動により加振した。この試験体は振動台実験として世界最大規模という。
平均レベルの南海トラフ三連動地震による地震動(マグニチュード8.7、継続時間8分程度)で揺らしたところ、構造の損傷はほぼ継続使用可能状態にとどまった。次に、南海トラフ三連動地震の平均レベルの2倍まで加振レベルを上げた結果、2~3階の梁端に破断が生じたが、倒壊には至らないことが確認できた。さらに平均レベルの3.1倍の揺れを加えると梁や柱の損傷が進行し、下部の1~5階が大きく変形し、平均レベルの3.8倍の地震動で完全に崩壊した。この実験で、崩壊に至るまでの部材の損傷の仕方がわかったが、さらに高いビルや異なる形式の超高層ビルの崩壊過程については、今後の検討が待たれるとしている。実験時の動画の一部はhttp://www.toshikino.dpri.kyoto-u.ac.jp/で公開している。