岡山大学は、「触覚注意」に関する人間の脳内メカニズムを解明することに成功したと発表した。

同成果は、同大大学院自然科学研究科(工学部)生体計測工学研究室の呉景龍 教授と中国医科大学の郭启勇 教授らによるもの。同成果の詳細は英国の神経科学雑誌「NeuroReport」に掲載された。

人間は外部からの情報を取り入れる際に、すべての情報を処理し採用するのではなく、自己意識の行動に適応した有用な情報を選択して利用しており、中でも「注意」は多くの情報から不要な情報を捨て去り、有用な情報のみを獲得する「情報選択」機能として知られてる。

しかし、「注意」は人間の内部の働きであり、実証的に捉えることは今まで困難で、実験心理学的な研究対象としてはタブー視されていた時代もあり、近年、実証的な知見が蓄積されてきてはいるものの、注意の脳機能の解明はいまだになされてはいなかった。

今回、研究グループは機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、人間の注意処理過程を行動学的観点と神経学的観点から解明し、人間の注意処理に関する新しい知見を獲得することを目的に研究を実施。具体的には視覚キューを用いて「触覚注意」のタスクにおける多感覚空間注意の実験を行うことで、触覚注意に関する人間の脳内メカニズムを解明することに成功したという。

また、この結果から、神経回路網モデルの物理・光学的手法(fMRI/ERP/EEGなど)の組み合わせによる、脳における注意情報処理の基本原理の解明やマルチメディア・ヒューマンインタフェースなどへの応用に有用となる基礎データが蓄積され、それを提供できる体制も整えられたとする。

なお研究グループでは、医療分野においては、注意に障害を持つ患者への診断法やリハビリプログラムの開発に向けた基礎データの提供や神経回路網モデルの物理・工学的手法を融合させて、脳における注意情報処理の基本原理の解明につながるとしており、今後、脳の高度なメカニズムを正確に解明することができるようになれば、より効率的に人間のような柔軟な人工システムを構築することができるようになるほか、最も適切な方法で情報を提示するための適切な評価方法を得ることなどができるようになることが期待されるとコメントしている。