島津製作所と宮崎県は3月6日、食の安全・安心と健康のための技術開発推進を目的とした技術連携に関する合意書を締結したと発表した。

食品の安全性試験方法や栄養・機能性成分の分析方法を確立することにより、人々の安全・安心で 健康な食生活の実現に取り組みます。

宮崎県は日本有数の農林水産業の産出額を誇り、2013年には「みやざきフードビジネス振興構想」を策定し、食関連産業(フードビジネス)の総合的な成長産業化を進めているほか、県の総合農業試験場において残留農薬等の約420成分を2時間で一斉分析できる高い残留農薬分析技術と検査業務の運営にかかる豊富な経験・人材を有している。

一方の島津製作所は、クロマトグラフや質量分析計など、試料に含まれる多成分を高感度に定性定量する高度な分析計測技術を有しており、多様な成分ライブラリとの組み合わせによる残留農薬分析や機能性成分の分析システムなど、食の安全・安心分野における技術および製品開発に実績があり、2012年度から科学技術振興機構(JST)先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、大阪大学を中心とし、ハイスループット(多成分一斉分析)、高感度・高分離能力を持つ残留農薬等分析装置「超臨界流体抽出分離システム(SFE-SFC-MS)」の開発にも取り組んでいる。

従来、農薬を網羅的に検出するためにはガスクロマトグラフと液体クロマトグラフの2種類の装置が必要であったが、SFE-SFC-MSを用いることで1台でカバーすることが可能になり、かつ約500種類の農薬を高感度かつ1時間以内で分析できるようになるため、残留農薬分析の時間短縮を図ることが期待されている。

今回の技術連携により、島津製作所は豊富な農林水産資源とそれらを活かす技術を有する宮崎県の知見を取り入れ、同システムの実用化開発等など推進し、高機能・高品質な農産物の供給体制の構築をサポートすることで、食の安全と人々の健康増進への貢献を目指すとしている。

なお、技術連携の主なテーマは以下の3つ。

  1. 質量分析計を用いる超臨界流体抽出分離システム(SFE-SFC-MS)による食品の安全性(農薬)試験方法の確立、および当該試験方法についての厚生労働省による妥当性評価確立
  2. 農産物中の栄養・機能性成分の分析法の検討および分析法標準化
  3. 近赤外光を利用した農産物の選別技術の基礎検討