東レは3月5日、繊維の断面形態をナノメートルオーダーで任意に制御することで、様々な原料樹脂を自在に複合させることができる合成繊維製造技術を開発したと発表した。
複合繊維とは、1本の繊維の長さ方向に複数の原料樹脂を配置した合成繊維であり、これまで、複合繊維の形態としては芯鞘型、貼り合わせ型、海島型などが実用化され、様々な高付加価値繊維が生み出されてきた。しかし、形態を制御する紡糸口金の技術的な限界から、断面を任意にかつ高精度で設計することは困難だった。今回、複数の原料樹脂を極めて多数の微細な流れに分割し、精密に計量しつつ分配した後、この多数の流れを一気に吐出、合流させるタイプの紡糸口金を開発した。同方法を用いれば、溶融粘度の異なる様々な原料樹脂を自在に複合繊維にすることができる。例えば、一般的なマイクロファイバやナノファイバは、海島型複合繊維の海成分に溶解しやすい樹脂を用い、後から海成分を溶解除去することにより製造するが、今回開発したナノ断面制御技術では、溶出加工性の改善や異形断面繊維の製造が可能となり、新たな機能性繊維を創出することができるという。
また、このナノ断面制御技術では、原料樹脂が2種に限定されず、3種以上の樹脂の使用も可能。これにより、貼り合わせ型断面を持ったナノファイバや混繊型のナノファイバを製造することができ、これまでのナノファイバでは困難だったソフト性とかさ高性、ストレッチ性を持った風合いを繊維に与えることが可能となる。さらに、ナノ断面制御技術を用いた繊維は、長繊維として織物や編物に加工することや、所望の長さにカットした短繊維として紡績糸や不織布などに適用できる。ナノ断面制御技術を用いた複合繊維の断面は高精度に制御されているため、繊維の切断や脱落がなく、かつ加工後の製品の品質を安定させることができる。
東レでは、同技術を用いた超極細繊維の生産をすでに開始している。また、このナノ断面制御技術を用いた新規ナノファイバの早期上市を目指し、開発を強化していく予定。