新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と豊田通商は、中国・北京にて工場単独の自動車解体として、前処理からフロン破壊などの有害物処理、車体裁断や廃タイヤの破砕までトータルで解体とリサイクルを行う大規模集約型のリサイクルシステムの実証プロジェクトを開始したと発表した。

中国の自動車保有台数は急速な経済成長に伴い現在、米国に次ぐ世界第2位となり、将来的な使用済み自動車の爆発的な増加が見込まれている。例えば、北京市では、使用済み自動車は年間約7.6万台発生していると言われているが、中国における自動車リサイクル工場は手作業での不安全な解体作業が主流のため、通常2~3人がかりで1日2~3台程度が処理の限界であるほか、処理に伴う環境負荷が増大しており、そうした対応も求められていた。

日本はすでに、大量処理が可能な自動車シュレッダー技術を用いたリサイクルシステムが主流となっているほか、自動車リサイクル法の下、資源回収のみならず、シュレッダーダストの処理、フロン破壊、廃液処理などの、リサイクルの流れにおける下流部分においても分業体制が整備されており、産業全体の連携により、低環境負荷と高いリサイクル率、より安全な解体作業が実現されている。しかし、中国ではこれらの下流部分の産業が構築されていないため、日本式の自動車リサイクルシステムをそのまま導入しても、効率的なリサイクルや環境負荷の低減につながらないという課題があった。

そこで今回、NEDOと豊田通商は、解体の上流に当たる前処理(有価物の取り外し、有害物の除去など)の機械化に加え、積載効率や安全作業を達成するプレス・切断機の導入、また下流に当たるさまざまな発生物の再資源化技術(配線類からの銅回収、廃タイヤの原料化など)まで統合した、トータルシステムの構築を行うプロジェクトを中国国家発展改革委員会と連携して開始。同プロジェクトでは、廃液やフロンなどの有害物の回収・処理工程までを統合しており、特に、エアコンの冷媒として使われるフロン類については、解体工程内で回収・破壊処理までを行うことで、約6590kg/台のCO2削減効果を生みだすことが可能だという。

自動車解体業でフロン類の破壊処理まで手がけることは、日本でも例がないことであり、これらの一連の工程を一元的に管理し最適化することで、日本国内で行われる以上のリサイクル率(90%以上)と低環境負荷を維持しつつ、年間1万台の処理が可能なシステムが構築できたとする。

同プロジェクトは2015年度末までの期間実施され、今回開発した設備を使用して、実証データの蓄積とシステムの改良が進められる予定。また、豊田通商および昭和メタルは、同プロジェクトの現地パートナー企業である北京博瑞聯通汽車循環利用科技への資本参加を行っており、今回の大規模集約型のリサイクルシステムを解体工場モデルプラントとし、中国国内において同プロジェクトの成果の事業化を進めていく予定だとするほか、中国の他都市へと普及させることで、日本技術の海外展開と環境問題の解決に貢献することを目指すとしている。

(左)廃液の回収工程、(中)切断機による車体の解体工程、(右)廃タイヤの破砕工程