東北大学は3月5日、電気炉で鉄スクラップを溶解する時に発生する煙灰(電炉ダスト)から選択塩化法・溶融塩電解により、亜鉛を効率よく回収する方法を開発したと発表した。
同成果は、同大大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の佐藤讓 名誉教授、朱鴻民 教授らによるもの。
電炉ダストは電気炉で製造される鉄鋼の1.5~2%、国内で年間約50万t発生しており、その中には25~30%の亜鉛が含まれている。これらの亜鉛は元々、錆止めとして自動車用鋼板などにめっきされていたもので、その量は国内で生産される亜鉛の30~40%に達すると見られている(国内の亜鉛市場は1000億円規模で、亜鉛鉱石は全量輸入に頼っている)が、電炉ダストは不純物を含む有害産業廃棄物として処理を行う必要がある。
電炉ダストの一部は化学処理後に、国内では7~8割が亜鉛原料に再処理されるが、亜鉛が鉄亜鉛酸化物という処理困難な化合物となっていること、鉛やカドミウムなどの重金属を含むこと、さらに塩ビなどに由来する塩素を多く含むことなどから、鉱石の代わりに直接、製錬に使うことはできないため、現行の処理法では、ウェールズ法と呼ばれるセメント製造設備に似た大型回転炉で膨大なエネルギーを使って鉄亜鉛酸化物中の亜鉛を還元・蒸留し、再酸化によって粗酸化亜鉛を作り、これを製錬工程に回すという手間をかける必要があった。また、この粗酸化亜鉛は純度が低く塩素も残るため、亜鉛の原料にするには溶媒抽出法などの追加の工程が必要となり、低効率で、かつ高コストの方法でしか亜鉛の回収ができないのが現状であった。
そこで今回、研究グループは、そうした課題の解決に向け、粗酸化亜鉛を経ることなく、選択塩化法と呼ばれる方法で電炉ダストを約1000℃において、塩素と空気の混合ガスで直接塩化して、電炉ダスト中の亜鉛を塩化亜鉛としてガス状で分離する手法を考案(この際、残りの大部分を占める鉄は酸化鉄として固体のまま残る)。得られた塩化亜鉛を塩化ナトリウムと混合して溶融塩(液体)にしてから鉛などの不純物を除いて浄化し、亜鉛の融点より高い450℃で電気分解することで高純度の亜鉛を製造できることを確認したという。
同手法を用いることで、電炉ダスト中の亜鉛を選択塩化することで塩素が障害とならず、容易に亜鉛と鉄を分離でき、かつ亜鉛も95%以上と高い回収率が見込めるほか、溶融塩電解を行うことで、純度99.99%の亜鉛を精製することが可能となる。また、溶融塩電解は電流密度を大きくできるため、設備もコンパクトにできるほか、得られる亜鉛は液体状であるため、水溶液電解で必要な、電極からの電着物の剥ぎ取り工程なども不要にできるというメリットもあるという。
さらに、塩化後に残る酸化鉄などについても、鉄源として電気炉に戻すことで廃棄物の削減が可能になると研究グループでは説明しており、世界的な問題である廃棄物としての電炉ダストの処理に貢献できる技術となるものとの期待を示している。