島津製作所は3月5日、新たに開発したトラップ濃縮カラムを用いた自動精製粉末化技術により、未精製の有機合成品や天然物などから目的化合物を精製、高純度な粉末として回収できる自動精製粉末化システム「Crude2Pure(C2P)」を開発、販売を開始したことを明らかにした。

有機合成分野、特に創薬探索部門では、合成した目的化合物の精製に分取液体クロマトグラフ(LC)システムが用いられているが、得られた目的化合物の分画液を粉末化するにあたり、従来の蒸発乾固では、複数の工程をそれぞれ異なる装置で行なわなければならず操作が煩雑であること、ならびに逆相分取LCシステムを用いた場合、水の比率が高い分画液中の目的化合物の粉末化には長時間を要すること、そして分取LCシステムで使用した移動相由来成分による粉末化の阻害や目的化合物の純度低下を招くといった問題があった。

同システムは、そうした複雑な操作なしで自動生成粉末化を実現することを目指して開発されたもので、シンプルなインタフェースの専用ソフトウェア「Open Solution Crude2Pure」を用いることで、トラップ濃縮および粉末化操作をそれぞれ3ステップで設定でき、かつシステム稼働状況の確認を容易に行うことができる。

また、同ソフトは、複数の分析者がC2Pシステムを共同機器として使用するオープンアクセス環境に対応しているため、ほかの分析者が使用中の場合でも、システムの動作を止めずに新たな試料をC2Pシステムにセットすることができ、順次、自動で粉末化処理を行うことが可能なほか、ラボから離れた場所にいる分析者に粉末化作業の終了を知らせるE-Mail機能も備えている。

また、独自技術により目的化合物を高い回収率で粉末化できるほか、精製・粉末化工程は自動化されているため、従来の蒸発乾固では8時間以上を費やしていた作業でも、半分以下の3~4時間程度に短縮することが可能だという。

さらに、逆相分取LCシステムで分画した試料中には目的化合物以外に移動相に由来する成分が含まれるため、目的化合物の純度が低下するといった課題があったが、同システムでは、新たに開発したトラッピングカラム「Shim-pack C2P-H」により、カラム内で目的化合物を強力に保持することができるため、移動相由来成分除去を容易に行うことができ、試料を高純度に精製することができる。加えて、移動相由来成分の洗浄・除去後にアンモニア水などをカラムへ送液することで、目的化合物をフリーベース(遊離塩基)として回収することが可能。これにより、医薬品候補の薬効スクリーニングや薬物動態試験など、新薬の探索研究のクオリティを改善することが可能になると同社では説明している。

なお同システムの価格は2270万円(税別)から、となっている。

自動精製粉末化システム「Crude2Pure」