2013年はスマートフォン向けのニュースアグリゲーションアプリが飛躍した年であったと言っても過言ではないだろう。「SmartNews」や「Gunosy」「Antenna」はその代表格だが、忘れてはならないのは日本最大のニュースサイト「Yahoo!ニュース」アプリだ。

Yahoo!ニュースは月間44億9000万PV(媒体資料より)を誇っているが、スマートフォンへの対応力を強化するため、2013年7月にiPhone向け「Yahoo!ニュース」アプリを、11月にはAndroidスマートフォン向けアプリの提供を開始した。

そして3月3日、新たに公開されたのがiPadに最適化された「Yahoo!ニュース」アプリだ。開発に携わったヤフー メディアサービスカンパニー 企画本部 Yahoo!ニュースの鳥屋 怜奈さんと同カンパニーでデザイナーを務める田中 淳子さんに開発の経緯をうかがった。

(左から)ヤフー メディアサービスカンパニー 企画本部 Yahoo!ニュース 鳥屋 怜奈さん、同カンパニー デザイナー 田中 淳子さん

タブレット端末に最適化した理由について鳥屋さんはタブレット端末市場の伸びを挙げる。

「タブレット端末市場は販売実績を見ていても大きく進捗していますし、アクセス数も増加している。2013年春頃から構想がありましたが、こうして出すことができました。様々なニュースアプリがある中で、タブレット端末に最適化したアプリは意外と少ないように感じます。スマートフォン向けのUIをそのままタブレット端末に流用しても使えますが、ユーザー体験としてあまり良くない。そこで最適化したアプリを提供する話になりました」(鳥屋さん)

タブレット端末の利用傾向を紐解くと、持ち運び用途よりも家に置いていてPCをいちいち起動せずにパッと大画面でブラウジングするといった用途が多いようだ。

「そこで私たちは『1日の始まりと1日の終わりに便利なニュースアプリ』をコンセプトに掲げました。朝は見出しだけパッと読めるように、夜はじっくりとニュース内容を確認できるようにというUI設計を行なったんです」(田中さん)

下記の画像と動画を見てもらえると分かりやすいだろう。一番左にニュースカテゴリ、続いてニュース見出し、真ん中から左がニュース記事の詳細を読めるようになっている。

カテゴリによって見出しの右側のスペースには天気や株価などの情報窓が用意されている

情報窓の領域を含めて記事詳細が表示される

「アプリは、食卓にお父さんが読むための新聞が置いてあるようなイメージで作りました。縦にカテゴリのタブを並べており、日経平均株価などをパッと見られるようにして、情報を圧縮してシンプルにすること。記事を見る順番を意識させないようにしています。また、もし大きく記事の内容を表示したい場合には拡大できるようにボタンとフリック操作による拡大機能も付けています」(鳥屋さん)

「最近のニュースアプリでは、写真などを用いたタイル表示がニュース見出しの主流ですが、見出しの位置がばらばらのため、人によっては見づらいと思われる可能性があります。このアプリではリスト表示にして、記事を開いても見出し一覧を表示したままにしているため、直感的にその他ニュースを見られるようにしてストレスを感じさせないように配慮しました」(田中さん)

このリスト表示にはもう一つ「迷子にならない」というメリットがあるという。

「今、どのニュースを見ているのか、どこにジャンプしたのかかわからないといった点をなくしました。レイヤを重ねてグラフィカルに見せることでユーザー体験を向上させるアプリが多いと思いますが、デザイン性を保ちつつも『ユーザーが絶対に迷わないようにする』ことを強く意識しています」(田中さん)

アプリは各カテゴリごとに上位8記事を「朝」「昼」「夜」ごとに自動的にキャッシュしている。また、コンテンツ量はYahoo!ニュースならではの膨大なニュース記事のストックがあるため独自ロジックで人気記事をピックアップしてロードできるようになっているという。また、スマートフォン向けに提供されている旬な話題をピックアップする「トレンド」カテゴリも用意されている。

最後に、Yahoo!ニュース専用のアプリとしての魅力を語ってもらった。

「RSS的に使えるニュースリーダー、王道を行くニュースリーダーはなかなか無かったと思うので、最適化したものを作りたかった。本当はアニメーションをたくさん入れ込んでユーザーに楽しんでもらえるようにしても良かったけど、そういったビジュアル面ばかり意識してしまうとニュースアプリとして使いづらくなってしまう。もっと多様なニュースに触れてもらえるように意識しています」(鳥屋さん)

「Yahoo!ニュースを読むためにゼロから設計したもので、こういうトップページはYahoo! JAPANアプリやヤフーの他のアプリだと作れない。とにかくニュースを見るということを生活の中に取り込んでもらえるように」(田中さん)

アニメーションは控えめだが、ユーザーが楽しめるように背景テーマの変更ができるようになっている

なお、Androidタブレット端末向けの提供については「現時点で時期は未定」(鳥屋さん)としながらも、「Androidだからできる機能があると思う。Androidならではの最適化も行なっていきたい」(同)と語った。