ハイヤーの配車・決済ができるスマートフォンアプリ「Uber」を提供するUber Japanは3月3日、同日より東京で正式にサービスを開始すると発表した。同社は、2013年11月より東京・六本木を中心に同サービスの試験運用を行なっていた。
Uberで提供されるハイヤーはトヨタのクラウンや日産のフーガなど。通常のハイヤーと同様に運転手がドアを開けるといった「ハイクラスなサービス」を提供する。
料金は最低料金が800円からとなっており、毎分65円、1キロごとに300円が加算されていく。決済はアプリに登録したクレジットカード決済となるため、現金のやり取りは必要ない。友人と同乗した場合には「割り勘」も指定できる。
なお、同社自身がハイヤーを運用するのではなく、ハイヤーを提供するタクシー会社との提携により提供される。そのため、同社は「一般乗用旅客自動車運送事業」ではなく、「旅行業」としての登録事業者となる。
(左から)ソフトバンクBB 取締役常務執行役員 溝口 泰雄氏、Uber Japan 代表取締役社長 塩濱 剛治氏、クオンタムリープ 代表取締役 ファウンダー&CEO 出井 伸之氏、米国大使館 商務部 商務公使 アンドリュー・ワイレガラ氏 |
東京・赤坂にある米国大使館で行なわれた記者会見。初めに登壇した米国大使館商務部商務公使を務めるアンドリュー・ワイレガラ氏は「(Uberを脅威とみる考えに対して)このサービスは決して黒船ではない。日本企業との提携があって、初めて成り立つサービス。カーシェアリングやシェアハウスといったシェアの広がりが見えるこの世界の中で、新たな体験をしてほしい」と語った。
続いて、主賓のクオンタムリープ 代表取締役 ファウンダーとCEOを務める出井 伸之氏とソフトバンクBB 取締役常務執行役員の溝口 泰雄氏が登壇。ソフトバンクBBはUber Japanに対してiPadとモバイル回線を提供。今後も協力関係の継続・拡大を続けていくとした。
一方で、出井氏はソニー 社長時代にWalkmanと競合関係にあったiPodを例に出し、「iPodのiTunesは、音楽権利者にとってみれば当時は非常に驚異的な存在だった。しかし、ユーザーサイドで見ればとても便利な存在として、一気にネットサービスとして定着した。今までの生態系と異なる存在という面ではUberも同じ。非常に期待しているし、ユーザーに支持されるのではないかと思っている」と期待感を見せた。
その後、Uberのサービス運用面の説明をするため、米Uber Technologies アジア地域統括最高責任者を務めるアレン・ペン氏が登壇。初期のUberアプリと、サンフランシスコのUberハイヤー運行状況を見せたのち、現在の運行状況を披露。マップ全体がUberの契約ハイヤーで埋め尽くされている点を強調し、成長をアピールした。
なお、Uberは現時点で投資フェーズにあり、採算性よりもボリュームを増やすことに重点を置いているという。世界17カ国語でサービスを提供し、31カ国81都市で展開。また、Googleに25億ドル(約2533億円)の投資を受けており、企業価値は3546億円にのぼる。
最後に登壇したUber Japanの代表取締役社長を務める塩濱 剛治氏は「Uberというサービスは経験してもらうことが一番重要。実際に乗ってみて、その体験を友人にSNSなどで拡げて欲しい」とUberサービスに対する自信を見せる。
Uberの価値は「ハイヤーを提供する企業とユーザーを繋ぐプラットフォームビジネス」という点にあると話す塩濱氏は「プレミアムな乗車体験をすることで誰もがお抱えドライバーを持つ感覚を持ってもらえる」とする。
サービス利用者の中でも特に若い女性の利用率が想定よりも高いといい「運転手の顔と車が乗る前にわかるという安心感がユーザーに響いているのかもしれない。ハイヤーならではの『臭いがしない』という点も良い」と話す塩濱氏。
会見を通して語っていたのは、単なる移動手段としてではなく、「"FUN"、楽しい体験、経験をするというサービス利用価値が重要だ」という点。実際に、試験運用段階で、他都市との同時期比較で2~3倍の乗車数を安定して確保している。
なお、東京以外の国内展開については現時点で未定となっており、東京23区全体への展開についても「当面はユーザーの元に到着する時間が10分程度に収まるようにバランスを見て拡大していきたい」(塩濱氏)との表現にとどめた。