ラピスセミコンダクタは2月27日、衛星放送受信アンテナ向け4入力4出力スイッチマトリクスIC「ML7405」を発表した。

欧州、南米などの地域では、周波数、偏波の異なる4種類の衛星放送を1台で受信するユニバーサルモデルと呼ばれる衛星放送受信アンテナが一般的に使用されている。ユニバーサルモデルには出力数が1、2、4出力のものがあるが、4種類の衛星放送を全て同時に受信、録画するためには4出力以上の衛星放送受信アンテナが必要となるため、4出力のユニバーサルモデルの需要が高まっている。このユニバーサルモデルは、ユニバーサルクアッド衛星放送受信アンテナと呼ばれており、今後放送衛星が打ち上げられる北米、インド、中東、アフリカ地域でも普及が進むと見込まれている。

また、従来の衛星放送受信アンテナに使用されるスイッチICは、4入力2出力のものしかなく、ユニバーサルクアッド衛星放送受信アンテナの4出力に対応するために、4入力2出力スイッチICを2個並列に接続していた。しかし、高周波回路では、部品配置、部品間の配線により特性が大きく左右され、従来の4入力2出力スイッチICを2個配置すると、基板上でIC間を結ぶ配線間のラインが長くなり、配線を流れる信号の損失が大きくなるとともに、配線間の結合による信号のクロストークが問題となっていた。この信号の損失とクロストークを回避するための基板設計、部品実装の困難さが、ユニバーサルクアッド衛星放送受信アンテナの普及の妨げとなっていた。

同製品は、ユニバーサルクアッド衛星放送受信アンテナのスイッチ回路を1チップで実現。4入力2出力スイッチICを2個使用する場合に発生する配線の損失、配線間のクロストークが起こらず、ユニバーサルクアッド衛星放送受信アンテナを容易に設計、製造することができる。また、4入力2出力スイッチICを2個使用した場合と比較して、実装面積を60%削減できる。

さらに、衛星放送受信用に必要とされる周波数帯域は950~2150MHzと広く、4入力4出力スイッチを1チップ化する場合には、IC内部での素子間、配線間のクロストークが大きくなるため、その低減が大きな課題だった。これに対し、独自の回路設計とレイアウトの最適化により25dBのアイソレーションを確保し、従来の4入力2出力スイッチICと同等以上の低クロストークを実現した。

加えて、高周波回路では入出力の素子間にインピーダンスのミスマッチが生じると反射による損失、不要な電波の放出などの障害が発生する。高周波回路では一般的に入出力インピーダンスが50Ωで設計されており、従来の4入力2出力スイッチを2個並列に配置した回路では、インピーダンスが半分の25Ωになりミスマッチが生じる。そのため、基板設計上の配慮が必要となるが、同製品を1個で使用する場合には、常にインピーダンスが50Ωになりミスマッチが生じず、基板設計が容易になる。

なお、パッケージは32ピンWQFN。サンプル価格は180円(税別)。すでにサンプルおよび量産出荷を開始している。

ラピスの衛星放送受信アンテナ向け4入力4出力スイッチマトリクスIC「ML7405」