三菱重工業は2月20日、同社の遠隔作業ロボット「MHI-MEISTeR」(マイスター)が東京電力株式会社福島第一原子力発電所(福島第一原発)に投入され、除染作業の実証試験とコンクリートコアサンプリング作業を完了したと発表した(画像1・2)。
MHI-MEISTeRは、1999年に発生した茨城県東海村の核燃料加工施設での臨界事故を受けて開発された災害対応ロボットを、原子力施設で培った多くのメンテナンス技術を援用して改良した機体で、2012年12月に公開された。具体的には、耐放射線性能や遠隔操縦性も大きく向上させ、高線量域での各種作業に対応可能とした。
これまでの災害対応ロボットの多くは、カメラなどを用いた点検・監視などが主な役割だったのに対し、MHI-MEISTeRは2本のロボットアームを備えており、アームの先端のツールを交換することで、点検・監視だけでなく、災害や過酷事故の現場で保守・補修などの作業ができるようになっている。
ロボットアームは、7自由度(関節)を持ち、片方でものを掴みながらもう一方で切断する作業や、左右に異なるツールを装着して1台で2種類の作業を同時に行うことも可能だ。そのため、原子力プラント内でのコンクリート穴あけや、手すりや配管の切断、障害物の除去、さらには除染や補修など、多様な作業をこなすことができる。福島第一原発でも、その機能を活かし、除染作業やコンクリートのサンプリング作業を行ったというわけだ。
MHI-MEISTeRは福島第一原発1号機に1月末から投入され、プラント内の放射能汚染物質を専用のノズルによる吸引除染や、ブラスト材(研削材)を噴射し汚染表面を薄く削り取るブラスト除染の作業実証を実施した。コンクリートコアサンプリングは、1号機内の狭い通路での走行確認や、建屋内の汚染程度を調査することを目的として行われた形だ。
コンクリートコアサンプリングは、壁や床から70mm程度の深さのコンクリートサンプルを採取する作業で、専用に開発されたドリルやハンドをロボットアームに装着し遠隔操作で行われた。今後、MHI-MEISTeRはさらに2号機においても、オペレーティングフロアの汚染度を調べるため、コンクリートコアサンプリングを実施する予定だ。
同社は今回、MHI-MEISTeRの高い作業能力を確認することができたことから、さらに高機能な遠隔作業ロボットや各種先端ツールの開発を進め、今後も福島第一原発でのなどでの多様なニーズに対応し、除染やサンプリングを初めとした支援作業に従事していくとしている。