東京都現代美術館、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館、スペイン文化活動公社は、日本スペイン交流400周年を記念し、スペインのリアリズムを継承する作品にフォーカスした「驚くべきリアル」展を開催している。開催期間は5月11日まで(5月5日を除く月曜と5月7日は休館)、開館時間は10:00~18:00。会場は東京都・清澄白河の東京都現代美術館。入場料は一般1,100円、大学生・65歳以上800円、中高校生600円、小学生以下は無料。
フェルナンド・サンチェス・カスティーリョ《馬に捧げる建築》2002年 MUSAC蔵 (c)Fernando Sanchez Castillo, Courtesy: MUSAC |
ピラール・アルバラシン《ミュージカル・ダンシング・スパニッシュ・ドール》2001年 MUSAC蔵 (c)Pilar Albarracin, Courtesy: MUSAC |
同展は、「驚くべきリアル」をテーマに、カスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションの中からスペイン絵画のリアリズムを受け継いだ27作家の、90年代以降の作品約50点を紹介している。ビデオ、空間インスタレーション、絵画、彫刻など、多様なメディアで表現されている展示作品の中には、ラテンアメリカの作家の作品も含まれており、それ自体が驚くべき特異性をもった中南米のトロピカルな風土の中で、スペイン的な"リアル"の感覚がどのように変容し、発酵していったかを見せてくれる。
ベラスケスやゴヤに始まり、80年代以降のアントニオ・ロペスに代表されるスペインの「リアリズム」は、対象を精密に再現するという単なる描画上の特質を意味するのではなく、スペインの作家の"リアル"に対する執着を示している。超自然なもの、幻想的なものを地上に引き下ろして対話しようとする欲望は、しばしば日常的な光景やモノを「誇張」することで表現される。
また、権威の象徴となるモニュメントや建築、乗り物などを利用したアイロニカルなプロジェクトを展開するフェルナンド・サンチェス・カスティーリョ(1970年、マドリード生まれ)は、スーツ姿の男性が白馬に乗って無人の大学内を徘徊するという作品で権力のあり方を問う。これはフランコ政権時に建てられたマドリード自治大学の校舎で、扉や通路は高く、機動隊が馬上から学生の蜂起を制圧できるように作られている。夢のようなイメージと裏腹に、規制・弾圧・暴力の痕跡が浮かび上がる作品だ。
そのほか、ピラール・アルバラシン(1968年、スペイン・セビリア生まれ)は、ステレオタイプの「スペイン文化」に対して皮肉とユーモアを交えた分析を行っており、典型的なフラメンコダンサーの衣装に身を包んだ人形とともに、作家自身も人形の一体であるかのように振る舞う。鑑賞者は、見せかけの世界に存在するただひとつのリアルである作家本人という魔術に魅せられることとなる。