三菱化学と米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)は2月19日、UCSB内に設置する三菱化学先端材料研究センター(MC-CAM)において、高分子材料を用いた有機薄膜トランジスタ(TFT)を作成し電荷移動度23.7cm2/Vsを達成したと発表した。詳細は、「Advanced Materials」に掲載された。

TFTには、a-Si TFTや低温Poly-Si(LTPS) TFTなどがあり、主にLCDパネルなどの画素スイッチとして用いられている。しかし、LTPS TFTは電荷移動度が高いものの、多結晶であるために均一性に乏しく、製造設備の制約により大面積化が困難である。一方、a-Si TFTは、プロセス温度が約400℃とLTPS TFTよりも低く、均一性が高いため大面積化が可能だが、電荷移動度が低い。例えば、有機ELディスプレイでは、10cm2/Vs程度の電荷移動度が求められる。また、LTPS TFT、a-Si TFTのいずれも400~600℃での熱処理が必要なため、基板にポリマーを使用するフレキシブルデバイスへの適用が困難である。

一方、有機TFTは、有機物の特徴としてシリコン系TFTよりも柔らかく、塗布による低温の製造プロセスが適用でき、大面積でフレキシブルなデバイスがより安価に作製可能になると期待されているが、実用化にあたっては電荷移動度が課題とされていた。今回、MC-CAMでは、Heeger教授によるデバイス作製技術、Bazan教授による高分子材料設計と合成技術、およびNguyen教授によるデバイス解析技術を組み合わせ、チームとして改良を重ねることで、23.7cm2/Vsの電荷移動度を達成した。これにより、有機TFTの実用化に向けて大きな一歩を踏み出したとしている。

今後、三菱化学では、同技術の実用化に向け、傘下の三菱化学科学技術研究センターにおいて、MC-CAMと連携しながら研究開発を進めていくとコメントしている。