Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは2月19日、米国時間2月18日にADIが2014年度第1四半期(2013年11月~2014年1月)の決算発表を行ったのを受け、2014年度(2013年11月~2014年10月)の事業方針を発表した。
同社代表取締役社長である馬渡修氏は冒頭、「ゴールは革新的なSolutionの提供により、持続的な成長を達成すること」とし、そのためにどのような取り組みを2013年度行ってきたのかを振り返った。
同社の2013年度の売上高は前年度比-2%の約26億ドルであったが、各四半期を見ると、前四半期比でプラス成長となっており、2012年末ころを機会に成長に転じたという。
現在、同社の売り上げの41%が「産業機器」。次いでワールドワイドで基地局への投資が進む「通信インフラ」。そして過去2年間の業績低迷の中にあっても順調に成長してきたという「オートモーティブ」、さらに14%程度がオーディオ、ビデオ、センサなどを中心とした「コンシューマ機器」、そして今後の成長が期待される「ヘルスケア」が7%程度となっている。また、製品別でみると、「コンバータ」が半分弱、アンプ/RFが25%程度で、この2つを併せて全体の7割程度を占める。中でもスマートフォンの普及やIoTへの期待などによりRFの需要が高まっているとのことで、今後のRF分野の成長に期待が持てるとした。
地域別の売上高は、「どこの地域で購入されたか」、と、「どこの地域でデザインインされたか」、という2つの指標を同社では用いており、より後者を重視する形にあるという。その中で日本はそのいずれの指標も10%強程度あり、「日本の顧客も海外シフトを進めているが、日本国内でのサービスを求める声が強い」(同)とする。
ただ、日本での分野別売上比率は、2009年度にはコンシューマが60%程度を占めていたが、リーマンショック以降その比率は下がってきており、2013年度にはついに30%程度へと減少。代わりに、他のセグメントが順調に売り上げを伸ばしてきており、産業構造の変化が見えているとのことで、中でもオートモーティブは2桁成長を続けており、自動車のエレクトロニクス化が日本での同社の成長の柱の1つになりつつあるとした。
また、そうした産業構造の変化を受け、「単なるデバイスサプライヤからソリューションプロバイダへの変身を目指す」(同)とし、すべての顧客の設計活動に対し、なんらかのサービスの提供を行っていくことを進めることで、長期的な目標として、「今後5年間のCAGR(年平均成長率)10%を目指す」とする。
ちなみに同社の過去5年のCAGRは7%程度とのことで、若干高めのハードルのようにも思えなくもないが、それを実現していくための以下の3つの戦略を推し進めていくとする。
- テクノロジー
- 顧客エクスペリエンスの強化
- オペレーション
1つ目のテクノロジーだが、方向性としてはMore than Mooreだという。アナログ半導体の世界はプロセスの微細化で性能を伸ばすよりも、さまざまな機能をどうやって実現し、統合していくか、という多様化が求められる。そこで以下の11のフォーカスエリアに向けた研究開発を推し進め、競争力の強化を図っているとのことで2014年度には400億円規模の資金を投入する計画だという。
- 最先端ミクスド・シグナル・プロセス
- 高周波プロセス
- 最先端SiP(System in Package)
- 低消費電力ミクスド・シグナル
- EMIの堅牢性
- 統合トランシーバ
- アイソレータ
- 最先端アルゴリズムの開発
- コンバータASSP
- プロセッサASSP
- 自動車用次世代MEMS
また、同社は外資系半導体ベンダとしては珍しく、日本にもデザインセンターを有しており、センサ系やアクチュエータなどの周辺技術の開発を行っており、CMOSイメージセンサ周りのAFEなどの開発やモータドライバ、スイッチなどのMEMS製品、高耐圧CMOSプロセスなど、民生、医療、産業、自動車向けIC開発に関わっているとするほか、日本のデザインセンターとして、顧客と直接的に討論を重ねられるエキスパートを配備し、問題解決などをフォローするなど、日本語でやり取りできる強みを生かした体制構築の強化を進めており、人数は非公開ながら、過去5年間で約20%の人員増を図ってきており、今後の5年間でさらに約20%の増員を予定していくことを強調した。
2つ目の顧客エクスペリエンスの強化については、代理店の最適化とオンライン販売への対応強化、そして主要顧客とのコンセプト段階からの開発への関与によるプラットフォームとしての提供の実現を進めているとする。
そして3つ目のオペレーションとは、製造工程のことを示しており、前工程、後工程併せて、自社ファブのみならず、外注先への委託を含め、柔軟性を確保しつつ、アナログ半導体の肝の1つであるテスト工程に対する技術開発などは余念なく自社で強力に推し進めることで競争力の維持を図っていくとした。