東京工業大学(東工大)は、従来のシリコンMEMS加速度センサに比べ、1/10という小さな加速度を検出できる超高分解能加速度センサを開発したと発表した。

同成果は、同大 異種機能集積研究センター 所長の益一哉教授、山根大輔助教、町田克之連携教授らによるもの。東京大学 先端科学技術研究センターの年吉洋教授、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)と共同で行われた。詳細は、「Applied Physics Letters」オンライン版に掲載された。

加速度センサは、スマートフォンなどの民生市場や、社会インフラ全般のモニタリング用途の拡大に伴い、今後も大幅な需要増加が見込まれる。これらの小型・量産可能な加速度センサでは、製造プロセスが確立したシリコンMEMS技術が広く普及している。しかし、加速度センサの機械構造に由来する雑音は可動電極(錘)の質量に反比例するため、サイズと最小検出感度のトレードオフが生じ、小型加速度センサにおいて1G以下の低加速度検出に必要な雑音特性の達成が困難だった。

今回、研究グループは錘材料をシリコンから金に置き換えることで、最小検出加速度を1/10に低減できる超高分解能性能を解析的および実験的に示した。分解能の指標となるブラウニアンノイズは、市販のシリコンMEMS加速度センサが約100~1000μG/Hzなのに対し、今回開発したMEMSセンサは0.78μG/Hzと極めて低い。これは、10-3G(G=9.8m/s2、重力加速度)以下の最小検出感度を有しており、同サイズのシリコンMEMS加速度センサでは到達できない低雑音性能を示している。また、半導体微細加工技術と電解金めっきを用いたデバイス作製法によりMEMS構造を微小センサ回路(CMOS回路)直上に集積可能であり、MEMSとセンサ回路が占めるチップ面積を約1/2に縮小できる。

チップ写真

電子顕微鏡写真

超小型・高感度な加速度センサを実現することで、人体行動検知による医療技術やスポーツパフォーマンスの向上、ロボットの精密制御や軽量化、衛星から電波の届かない場所でGPSを置き換える自動航行制御システムの実現、および低加速度の振動モニタリングが必要な宇宙環境計測など様々な分野に応用できる。また近年、全てのモノに大量のセンサを配置する時代の到来が予想されており、同技術はその際に動作検知の基本となる加速度センサの超小型化と高感度化を実現できる極めて有効なものになるとコメントしている。