新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月5日、生活支援ロボット(Personal care robot)の安全性(充電池、ロボット形状、電磁妨害、耐久性、環境センシング、機能安全など)に関する、国際標準化機構(ISO)の国際標準化規格「ISO13482」が2014年2月1日付けで正式に発行されたことを発表した。

日本では、少子高齢化が急速に進展しており、労働力の不足が懸念されている。このため、ロボット技術は産業分野だけではなく、介護・福祉、家事、安全・安心などの生活分野への適用が期待されているのは、ご承知の通りだ。しかし、生活分野における生活支援ロボットの安全性技術に関する国内外の規格などが未整備であるため、「ロボットの時代が来る」といわれつつも、各社様子見という具合で、プロトタイプ的なものを発表する段階に留まっており、量産にいたらず、市場が形成されていないという具合だ。

民間企業の独自の取り組みでは技術開発も産業化も加速されないことから、安全性基準に関する国際標準などの整備が求められており、それを受けてNEDOが2009年から2013年度の5年間にかけて実施したのが、生活支援ロボット実用化プロジェクトというわけだ。このプロジェクトによってISO13482を正式発行させることで、世界をターゲットとした生活支援ロボットの市場を日本主導で構築しようという狙いがある。

生活支援ロボット実用化プロジェクトでは、生活支援ロボットとして産業化が期待されるロボット、正確には「移動作業型(操縦が中心)」(画像1)、「移動作業型(自律が中心)」(画像2)、「人間装着(密着)型」(画像3)、「搭乗型」(画像4)の4タイプを対象にプロジェクトに参加しているロボットメーカー、試験研究機関および認証機関等が密接に連携しながら本質安全・機能安全の試験を行い(画像5)、安全性などのデータを取得・蓄積・分析して具体的な安全性検証手法の研究開発を行ってきた。

画像1(左):。操縦が中心の移動作業型の代表として、パナソニックの「ロボティックベッド」。搭乗型でもある。画像2(右):自律が中心の移動作業型の代表として、富士重工業の「共用部清掃ロボット」

画像3(左):人間装着(密着)型の代表がサイバーダインの「HAL福祉用」。画像4(右):搭乗型の代表として、セグウェイ(画像は産業技術総合研究所仕様「AIST SP」)。セグウェイのような立ち乗り型のほか、車いす仕様の座り乗り型なども

その開発拠点として、茨城県つくば市に「生活支援ロボット安全性検証センター」(画像6)を2010年に設立し、同センターにおいて各種生活支援ロボットの安全性検証試験を実施してきたというわけだ。同センターは、生活支援ロボットの主要な安全性試験が行える18の試験設備が整備されているのが特徴だ。現在は生活支援ロボット実用化プロジェクトの中で試験方法の研究開発中である。また同プロジェクトの終了後も存続され、介護ロボットの試験センターとして活用される予定だ。

画像5(左):認証スキーム。画像6(右):生活支援ロボット安全性検証センター

さらに生活支援ロボット実用化プロジェクトでは、国際標準化提案と認証手法の開発も実施してきた。この認証を受けることにより、第三者が安全性を確認したことになり、生活支援ロボットに対する安全性評価が高まり、普及を促す効果があるというわけだ。なお、すでに同プロジェクトに参画しているサイバーダインのロボットスーツ「HAL福祉用」は、原案版ISO/DIS13842に基づく認証を2013年2月に日本品質保証機構(JQA)より受けている(画像3)。

なお、今回の正式発行に至るまでは、生活支援ロボット実用化プロジェクトのメンバーが日本を代表し、ドイツなどの欧州諸国と活発な議論を行い実現にこぎ着けたという。実際、2013夏には発行されるといわれていたが、徐々に伸びて今回にいたってようやく正式発行となり、なかなかの難産であったことがうかがわれる。ともかく、今回遂にISO13482の正式版が発行されたことにより、この規格に基づく認証を受ける生活支援ロボットが増え、さらなる生活支援ロボットの活躍が期待できるようになるというわけだ。

今後は、生活支援ロボットの安全検証手法の開発を進め、プロジェクトに参加しているほかのロボットの認証の早期実現を目指すとしている。国際標準化提案活動に関しては、試験方法やロボット形式各論についての提案活動を行うと共に、ほかの関連する規格の提案活動等を継続していくとした。

さらにNEDOは、今後も、日本発の安全性を高めた生活支援ロボットの研究開発や、安全性の試験および認証事業に関わる環境整備などを推進し、日本が誇る安全な生活支援ロボットの世界的な普及やロボット産業の発展に貢献しいくとしている。