クラウドベースの業務アプリケーションが成熟しており、既存のERPはかつての魅力だった統合ソリューションや信頼性といった特徴を失いつつある。調査会社の米Gartnerによると、2018年にはサービス主導企業の約3割がERPの大部分をクラウドベースのソリューションに置き換えるなど新旧交代が進む見通しという。
Gartnerが1月29日にERP市場の動向と見通しを発表した。それによると、「モノリシックなオンプレミス型ERPと業務アプリケーションに代わる代替」となるクラウドベースのソリューションが成熟しつつあり、2016年はこれら新しいERPソリューションがオンプレミス型のERPを浸食するというトレンドが顕著になると予想している。
ERPが最盛期だった1990年代は、業務アプリケーションやプロセスの連携や統合による効率化や事業上のメリットが重宝され大手企業やグローバル企業を中心に導入が進み、ERPは巨大市場となった。
だがSalesforce.comなど一部の機能に特化したクラウドアプリケーションが次々と生まれており、機能的に成熟しつつある。「企業の幹部は(オンプレミスERPと)同じクオリティを望んでいるが、同時に(既存のERPに限らず)あらゆるソフトウェアソリューションで得られると思いはじめた」とGartnerのアナリスト、Andy Kyte氏は述べている。Kyte氏は同時に、柔軟性がない点に懸念を抱き始めている点も指摘している。こういったことから、Gartnerでは多くのカスタマイズを必要とするERPは、「レガシー(Gartnerの定義では、「変化するビジネスのニーズに適応する柔軟性がないシステム」)」になると予想する。
Kyte氏は既存のERPがすぐになくなるわけではないとしながらも、少しずつシフトが進むとする。その上で、以下の2つの予想を打ち出している。
- 2018年にはサービス主導型企業の30%がERPをクラウドに移行する
- モノリシックなERPから部分的にクラウドを取り入れたハイブリッドアプローチに移行が進むが、2017年には70%の企業がコスト効果(TCO)の面でメリットを体感できない
2.では、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドに関係なくERPソリューションは長期的なコスト算出が難しく、1ユーザーあたりのコストに目がいきがちである点を指摘。そのようなアプローチの場合、スタッフの再トレーニングや統合など別のコストが発生する必要があるため長期的にはトータルのコストが割高になる可能性があると警告している。
「クラウドソリューションならすぐにバリューが得られると考えるのではなく、ERP戦略は事業目標とリンクさせてバリューを実現していくべきだ」とアナリストのCarol Hardcastle氏は助言している。