ヤフーは1月29日、2013年度第3四半期の決算説明会を開催した。同期の売上高は968億円と、前年同四半期比で9.3%の成長を記録した一方、eコマース新戦略による売上減、費用の増加に伴い四半期ベースで創業以来初の減益を記録した。
売上高の内訳では、広告のマーケティングソリューションが13.3%の成長を見せ、好調を維持。一方で、eコマース新戦略の影響を受けたコンシューマ事業については-6.7%のマイナス成長となった。その他事業ではFX事業が好調で、前年同四半期33億円から24億円増の57億円となっている。
広告事業では、ディスプレイ広告と検索連動型広告の双方が堅調な推移。ただ、ディスプレイ広告のうち、プレミアム広告が苦戦を見せている。この点について会見で説明を行なったヤフー 代表取締役社長 宮坂 学氏は「プレミアム広告についてはマイナス成長となったが、ブランドパネルは好調。また、YDNが吸収している面もある」とした。なお、スマートフォン広告は前年同四半期の64億円から55億円増の120億円となり、売上高比率も13.5%から22.0%へと高まった。
一方、コンシューマ事業では、eコマースの取扱高が前年同四半期の4305億円から313億円増の4618億円に増加した。事業別で見ても、ショッピングやオークション、その他取り扱いの全てで成長を記録。スマートフォン経由の比率も21.6%から30.0%へと高まっている。
ただし、冒頭でも触れたとおり、Yahoo!ショッピングの出店手数料無料化などのeコマース新戦略により、四半期利益は前年同四半期の499億円から-1.5%の492億円に減少している。この点について宮坂氏は、「Yahoo!ショッピングの取扱高が1年ぶりに増加に転じるなど中長期的に効果がある施策とみている。数年間マイナス推移だったが、オークションを含めて回復傾向。第3四半期の伸びは前年比で2桁成長を狙えるのではないか」と新戦略の効果を強調した。
なお、一時的に減益にはなるものの、2013年度の通期見通しは、利益率の高い事業が好調であるとの理由から営業利益を10月時点の1930億円から、1960億円と上方修正。売上高は3871億円と見通しを維持しているが、創業以来17期連続での増収増益は確保できるとの見通し。
当期純利益についても、投資有価証券の売却などを含め、1259億円の上方修正を行なっている。ほかの特記事項では、2014年度から国際財務報告基準(IFRS)への移行を表明。理由について同社 最高財務責任者 執行役員の大矢 俊樹氏は「成長ドライバーとしてM&A戦略を進める際に、のれん代の定期的な償却が決まっている日本の会計基準だとPLで見えづらい面がある」とした。
事業概要では、上位20サービスのDaily Unique Browser(DUB)が順調に推移しているほか、1年前に6500万ダウンロードだったヤフーのスマートフォンアプリが、1億3500万ダウンロードに達したことを説明。宮坂氏は「小ヒットを狙うのではなく、大ヒットするアプリを狙って頑張った社員の努力が実った結果ではないか」とした。
その中でも、国内No.1ニュースサイトのアプリ版である「Yahoo!ニュース」の提供や「Yahoo!検索」のきせかえテーマ導入について触れ「国内1位のニュースサイトとして、近年ニュースアプリが増加している中で、ここで負ける訳にはいかないという思いで出した。また、きせかえテーマについても、無味乾燥になりやすい検索結果画面に賑わいを与える面で好評をいただいている。想定以上に利用者が多く、すでに100万DUBを達成している」と説明した。
広告のマーケティングソリューション事業については、検索連動型広告で市区町村単位でのターゲティングができるようになった点について説明。「ユーザーの利便性を重視するため、一桁成長にとどめてターゲティングを運用している。たくさん出せば儲かるが、長期間の目で見て広告を出していきたい」とした。
ディスプレイ広告では、ブランドパネルは好調を維持。「ネットにおけるブランディング広告は難しいのではないかと昨年のこの時期は思っていたが、ヤフーとして数少ない唯一の場ではないかと思いリッチ化を推し進めた。リッチアド売上高比率も30%まで上昇している」(宮坂氏)。ほかにも、プライベートDMPの提供や、DSP事業の開始、ビデオ広告の提供などを説明している。
コンシューマ事業では、改めてeコマース新戦略の詳細を説明。出店手数料の無料化発表後、出店希望がこれまでの数十倍に達し、法人と個人あわせて9万件以上の出店申込みを受けたという。実際に12月末には2万9411店にまで店舗が増加。これは開店準備中の店舗も含めたもので「実際に運営しているかとは別」(宮坂氏)としながらも、商品数の増加や年末商戦の取扱高が過去最高を記録したことをあわせて手応えを感じているようだった。
ヤフオク!についても、Yahoo!プレミアム会員登録が必須であったものを撤廃したところ、入札者数が前年同四半期比で約3割の増加、落札単価についても1割の増加を記録。「リーマンショック以降、長らく低成長率で推移していたが、かなりの伸びを見せている」(宮坂氏)とした。
なお、Yahoo!ショッピングやヤフオク!で、出品者や店舗数の増加による悪質な商品売買を行なうケースが一部で危惧されていると宮坂氏は前置きした上で、「幸いにも、ガイドライン違反による出品削除数や未着トラブルなどは増加していない。安全性は確保されている。ただ、売買トラブルは抑制できていると喜ぶものではなく、ゼロを目指さなくてはならない」として、改めて安全対策の徹底を口にした。
最後に宮坂氏は「四半期ベースで創業以来初めての減益となったので、改めて理由を説明したい」とeコマース新戦略の影響を詳細に語った。減益の具体的な総額は売上で-30億、広告宣伝の費用面で10数億、合計50億弱のインパクトがあったという。
ただ、「eコマースで一番になりたい、eコマースでもヤフーは凄い会社になるという気持ちで戦略を組み立てた。減益が続く訳にはいかないし、201X年3月期までに営業利益3300億円とeコマース市場で流通総額1位を目指すというところを達成したい」と語った。