理化学研究所(理研)は1月29日、京都大学、東京大学生産技術研究所(東大生研)との共同研究により、日本全域に生息する「ニホンアマガエル(アマガエル)」の合唱にはパターンがあることを、音声可視化装置と数理モデルを利用して発見したと発表した。
成果は、理研 脳科学総合研究センター 脳数理研究チームの合原一究 基礎科学特別研究員と、京大情報学研究科の奥乃博 教授、東大生研の合原一幸 教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月27日付けで英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
春になると、多くのアマガエルが水田で鳴き交わしているのを聞くことができる。しかし、アマガエル同士が、お互いに発声のタイミングを変化させながら、どのように影響を及ぼし合っているかは、個体ごとの発声のタイミングと位置の測定が難しいこともあって、これまではわかっていなかった。
そこで研究チームは、アマガエルの鳴き声に合わせてLEDが点滅する音声可視化装置「カエルホタル」を開発。この装置を40台水田に並べて点滅パターンを動画として撮影する野外観察を行い、そのパターンを「結合振動子系」の理論を応用した数理モデルを使い「合唱の法則」の解析を試みたのである。
なお結合振動子系とは、周期的に振る舞う振動子が互いに影響を及ぼし合うシステムのことをいう。結合振動子系の振る舞いを記述する典型的な数理的枠組みとして、京大の蔵本由紀名誉教授が提案した「蔵本モデル」がある。
その結果、野外では複数のアマガエルが交互に鳴き交わす傾向があることや、個体ごとは1~3m程度離れていることを発見し、さらに前述したように結合振動子系の理論を応用した数理モデルを用いて野外で観測した発声のタイミングと位置を定性的に説明した。
画像は、音声可視化装置と数理モデルの2面作戦で今回の結論にたどり着くまでの研究の流れをまとめた概念図。右図は、水田に設置したカエルホタルの明滅パターンだ。色の明るい箇所がアマガエルの発声に対応し、近くの個体同士が交互に鳴いている様子が表されている。
今回利用した音声可視化装置と数理モデルは、日本のみならず、オーストラリア、パナマなどで他種のカエルの研究にも使われており、さらに、昆虫など、夜行性で音声を発する動物の行動研究への応用が期待できるとしている。