国立循環器病研究センター(国循)は1月28日、「急性心筋梗塞」患者の心臓リハビリテーションおよび運動療法が、運動能力だけでなく腎機能指標も改善することを明らかにしたと発表した。
成果は、国循 循環器病リハビリテーション部の後藤葉一部長らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2013年11月12日付けで日本循環器学会誌「Circulation Journal」のオンライン版に、2014年1月25日付けで同誌印刷版にそれぞれ掲載された。
慢性腎臓病の患者数は約1330万人といわれており、「虚血性心疾患」など「動脈硬化性疾患」を発症する頻度が高く発症や進行の防止が大きな課題となっている。一般に虚血性心疾患の発症や動脈硬化の進行を防止するためには運動療法が推奨されているが、慢性腎臓病患者の場合は運動療法がタンパク尿や腎機能障害などを悪化させる恐れがあり、従来は積極的な運動療法は推奨されてこなかった。
今回の研究手法としては、同センターに急性心筋梗塞で入院して3カ月間の回復期心臓リハビリテーションに参加した528人について、3カ月後の運動能力と腎機能の変化の調査が行われた。分析に当たっては、患者群を心臓リハビリ開始時の腎機能レベルにより腎機能正常者と慢性腎臓病患者という分類がなされ、さらに慢性腎臓病患者の中で退院後の外来心臓リハビリ参加回数が週1回以上の群(積極的参加群)と週1回未満の群(実質不参加群)という分類が行われた。
その結果、心臓リハビリ前後の比較によると、腎機能正常者では運動能力が約11%増加し腎機能には変化がなかった一方、慢性腎臓病患者は運動能力が12%改善しただけでなく腎機能も約10%向上したことが確認されたのである(画像1)。また、慢性腎臓病患者を外来心臓リハビリ参加回数で分類して比較が行われたところ、心臓リハビリ積極的参加群では運動能力が13%、腎機能も約10%改善したが、実質不参加群では運動能力はわずかに改善したものの腎機能改善は見られなかった(画像2)。
従来は慢性腎臓病患者に対する運動療法が積極的に推進されていなかったところ、今回の研究では慢性腎臓病を持つ急性心筋梗塞患者が心臓リハビリおよび運動療法に参加することで、運動能力だけでなく腎機能指標も大きく改善するとが判明した形だ。腎機能が悪い急性心筋梗塞患者も退院後に積極的に外来心臓リハビリに参加することが望ましいと明らかになったことで、今後は診療ガイドラインの作成などに活用できると期待されているとした。