産業技術総合研究所(産総研)は1月28日、圧電薄膜であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZT)薄膜を用いた圧電MEMSデバイスの200mmウェハプロセス技術を開発したことを発表した。

同成果は、産総研 集積マイクロシステム研究センター ライフインターフェース研究チームの小林健 主任研究員、大日本印刷 研究開発センター 次世代MEMS研究所の森脇政仁 研究員、瓜生敏文 研究員らによるもの。詳細は1月29日より東京ビッグサイトにて開催される「第13回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2014)」にて発表される予定。

PZT薄膜を用いた圧電MEMSデバイスはすでにインクジェットヘッドやジャイロセンサを中心に100mm、150mmウェハプロセスで製造されているが、今後の需要増が見込まれているのに対し、PZT薄膜形成の難しさから200mmウェハプロセス化が進まず、低コスト化の障壁となっていた。

そこで今回、そうした課題の解決に向け、産総研と大日本印刷は共同で、200mmウェハを用いた圧電MEMSのプロセス技術開発を行ったという。

具体的には、200mmウェハプロセスでの量産試作にスムーズに移行することを目指し、100/150/200mmウェハにPZT薄膜を同一条件で形成できる自動ゾルゲル形成装置を開発。形成時の雰囲気や熱処理条件の最適化を図ることで、良好な圧電特性に有利な(100)/(001)結晶配向性を維持しながら、200mmウェハ1枚あたりの粗大粒子の数を従来の300個以上から20個以下に低減することに成功したという。

(a):粗大粒子が溶液塗布時のムラとして現れている従来の形成条件のPZT薄膜表面、(b):今回の開発条件で形成したPZT薄膜表面、(c):今回開発の条件で形成したPZT薄膜のX線回折図形。(a)と(b)の矢印の先の青点は、ウェハ表面検査装置で測定した粗大粒子分布測定結果。(c)のPt(111)は下地電極に由来する回折ピーク

さらに、この良質なPZT薄膜形成200mmウェハを、圧電MEMSデバイスに加工するプロセス技術を開発。作製した圧電MEMSデバイス上のPZT薄膜に、電界強度100kV/cmの直流電圧を印加することで、圧電定数d31で-90pm/V(-2~2V駆動時)、-140pm/V(0~20V駆動時)と実用レベルの圧電定数をデバイスの状態で実現できていることを確認したという。

(a)がPZT薄膜を形成した200mmウェハ。(b)が200mmウェハで作製した圧電MEMSデバイス

なお研究グループでは今後、200mmウェハ面内でのPZT薄膜の均一性を向上させるとともに、研究試作が完了した圧電MEMSデバイスの量産試作を行っていく予定とするほか、100mmウェハでの研究試作から200mmウェハでの少量生産までを可能とする、企業のニーズに即した研究開発支援体制の構築を目指すとしている。