クラウドが持つコストメリットや運用メリットを最大限に享受するため、基幹業務のクラウドへの移行が本格化しつつある。ただ、そこで直面するのが、24時間365日止めることができないミッションクリティカルなシステムの可用性や、災害発生時のBCP (業務継続計画)/DR(災害復旧)体制をどのように担保するのかという課題だ。アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)上にサイオステクノロジーが提供するHA(高可用性)ソリューションを実装することで、シンプルかつオープンなクラスタ環境を短期間で構築することができる。

ミッションクリティカルな基幹系システムにも広がりつつあるクラウド利用

新たなシステムを開発したり更新したりする際にパブリッククラウドの利用を最優先に検討する、"クラウドファースト"を基本原則とする企業が日本国内でも増えている。当初はWebサーバやファイルサーバ、あるいは開発・テスト環境などを中心に利用が始まったクラウドだが、いまやその対象は24時間365日の無停止稼働や災害時のBCP(業務継続計画)/DR(災害復旧)を義務付けられた基幹系システムにも広がりつつある。

アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 技術本部
技術本部長 玉川 憲 氏

「AWSは高度なセキュリティや性能に加え、高度な冗長性を備えた堅牢なインフラとして、ミッションクリティカルなエンタープライズシステムに大きなメリットを提供します」と話すのは、アマゾンデータサービスジャパンの玉川憲氏だ。

周知のとおりAWSは、アマゾンが2006年に米国で開始したクラウドサービスである。2011年3月に東京リージョン(データセンター群)が開設され、日本企業にとっても身近な存在となった。現在では、世界9か所のリージョンと46拠点以上のエッジロケーション網からなるグローバルインフラを展開。1時間ごとの従量課金で利用可能な仮想サーバ「Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)」、設計上のデータ耐久性99.999999999%(イレブンナイン)を誇るオンラインストレージ「Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)」、クラウド内にプライベートネットワークを構築可能とする「Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC)」など、30を超えるサービスを提供している。

冗長性を持つ堅牢なインフラを標準機能として提供

具体的にAWSは、どのようなインフラの冗長性を提供しているのだろうか。その説明に入る前に、オンプレミスで運用しているシステムにおける可用性の確保について考えてみよう。そこでは、プライマリサーバに何らかの障害が発生した際にセカンダリサーバが代替して処理を続行するクラスタ構成を組むのが一般的だ。

しかし、これだけでは十分とは言えない。仮にセカンダリサーバにも障害が発生した場合はどうなるのか。さらには、巨大地震や津波などの大規模災害によってデータセンターそのものが機能停止に陥ってしまった場合にどうするのかなど、システムの重要性が増すほど、最悪のリスクを想定しておかなければならないからだ。

遠隔地のデータセンターにバックアップサイトを設け、常に同期をとりながらデータを複製する必要があり、新たなデータセンターや専用線の契約、サイトごとの運用管理者やオペレーターの確保など、コストはどんどん膨らんでいく。これに対してAWSは、「オンプレミスのシステムよりも強固なクラスタ環境を、標準機能だけで簡単に構成することができる」(玉川氏)のである。

「AWSでは無尽蔵とも言える潤沢なリソースが用意されており、稼働中の仮想サーバに問題が発生した場合、即座に別の仮想サーバを立ち上げて処理を続行することができます。また、APIコールを利用することで、プライマリサーバからスタンバイサーバへの切り替えをプログラムによって自動化することも可能です」

では、仮想サーバを運用しているAWSのデータセンターが被災した場合はどうなるのだろうか。この点についても十分な冗長性が担保されている。AWSにおけるリージョンとは、1か所ではなく2か所以上のデータセンター群を相互接続させたクラウドサービスの概念だ。物理的な距離が離れ、それぞれ異なる系統電力や通信網を持って独立した2か所以上の「アベイラビリティ・ゾーン」を任意に選んで組み合わせることができる。

「例えば東京リージョンの中で、Zone-AとZone-Cといった異なるゾーンをまたいだクラスタを構成することで、地震や津波などの同時被災を避けるBCP/DR体制を構築できます。さらに、シンガポールやシドニー、オレゴン、サンパウロなどの海外リージョンにもスタンバイサーバを配置し、データを同期させておくことが可能。われわれが『Multi-AZ』と呼ぶこのグローバルなクラスタ構成を利用することで、いざという時に世界のどこからでもサーバを再起動することができます」と玉川氏は強調する。

オンプレミスと同じ障害時フローで対応可能
サイオスのHAクラスタソフトと連携

ただ、AWSが提供するインフラはあくまでも"部品"であり、実際にミッションクリティカルなシステムを構築するためには、専門的なスキルとノウハウに基づいたインテグレーションが必要となる。データセンターからハードウェア、OS、ミドルウェア、ユーザーデータ、アプリケーションにいたるすべての層に対して、障害発生時に「どこが、どうなった時、どの部分を、どのように、どうするか」といった対策を施すことで、はじめて業務が必要とする高レベルのSLAを担保することができるのだ。

AWSとのパートナーシップを通じて、その"ベストプラクティス"を提供しているサイオステクノロジーの小野寺章氏はこう語る。

サイオステクノロジー株式会社
事業継続ビジネス エバンジェリスト 小野寺 章 氏

「サイオスではAWSのMulti-AZ構成において、アプリケーション監視を行う『LifeKeeper』およびデータレプリケーションを行う『DataKeeper』の動作検証をいち早く進めてきました。この2つのソリューションをAWS上に実装することで、オンプレミスとまったく同じ障害時フローやタイムアウト値によるHAクラスタを、シンプルかつ短期間で構築することができます」

しかも、こうして構築されるHAクラスタは、きわめて"オープン"である。

「AWSはエンタープライズシステムで利用されている主要なOS、ミドルウェア、開発言語、フロントUIのほとんどをサポートし、最も汎用性の高いクラウドとして知られています。サイオスのLifeKeeperやDataKeeperもまた特定ベンダーのハードウェアに依存しない中立性を徹底しています。『お客様をベンダーロックインさせない』という両社の理念が完全に一致したのです」と小野寺氏は話す。

こうしたAWSとLifeKeeperおよびDataKeeperを活用したミッションクリティカル業務のクラウド利用をテーマにしたセミナーが、2月25日東京で開催される。AWS上での可用性の考え方やLifeKeeperとの連携方法、先進企業における導入事例、クラウド上で高い可用性を担保するための実戦ノウハウ、AWSやLifeKeeperの構築手順のデモンストレーションなど、盛りだくさんの内容を予定している。「新しいクラウド活用のヒントを掴むことができる絶好の機会であり、どうか期待していただきたい」と、玉川氏と小野寺氏は参加を呼びかける。

セミナーの詳しい情報

2月25日東京
https://entry.sios.com/public/seminar/view/264

LifeKeeper/DataKeeper評価版(60日間無料)

https://www.sios.com/products/bcp/lkdk/product/evaluation_lk.html