早稲田大学 早稲田バイオサイエンスシンガポール研究所(WABIOS)の鈴木団主任研究員、および同大 理工学術院の武岡真司教授、同大大学院生の武井義明氏らのグループは、水中で触れることなく細胞の中の温度を測定する「レシオ型ナノ温度計」の開発に成功したと発表した。
レシオ型ナノ温度計は、2つの値の比率(レシオ)から温度をイメージングするというもの。温度に応答する「Eu-TTA」という蛍光色素(A)と、応答しない「Rhodamine 101」という蛍光色素(B)を混ぜて、一つの粒子の中に閉じこめた後、AとBの値の比率A/Bを測ることで、温度を計測することができる。レシオは、温度と1対1で対応するうえ、単一輝点で温度計になり、顕微鏡の焦点ずれに影響されないという特長がある。また、pH(4-10)、イオン強度(0-500 mM)、タンパク質濃度(牛血清アルブミン0-45 wt%)、粘性(1-220 cP)といった外部環境に応答することなく、温度だけを測れる点も大きな利点になっている。
早稲田大学では、今回の研究成果について、温度変化を利用するドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発・改良において利用できると説明。微小粒子の中に閉じ込めた薬を目的の場所で放出するような仕組みを開発する際などに有効という。なお、DDSは、体内の薬物分布を細かくコントロールし、適切な場所に、適切なタイミングで、適切な量だけ投与する方法で、副作用の大幅な軽減などの効果が期待されている。