生理学研究所(NIPS)は1月9日、痒いところを掻くこと(掻破)によって生じる快感に「報酬系」と呼ばれる脳の部位(中脳や線条体)が関係することを解明したと発表した。
同成果は、NIPSの望月秀紀 特任助教授、柿木隆介 教授らによるもの。詳細は米国の神経生理学雑誌「Journal of Neurophysiology」1月号に掲載される予定だという。
今回研究グループは、実験的に手首に痒みを誘発し、その近辺を掻くことによって快感を生じさせ、その際の脳の活動を、磁気共鳴断層画像装置(fMRI)を使って計測するという調査を実施。その結果、中脳や線条体といった報酬系と呼ばれる脳部位が強く反応することを確認したという。
この結果は、報酬系の活性化が掻破による快感を引き起こす原因であることを示すもので、望月特任助教は、「気持ちよいからもっと掻いてしまうことがよくあるが、アトピー性皮膚炎の患者などでは、過剰な掻破が皮膚を傷つけ、それが原因で痒みがさらに悪化してしまうという問題があった。今回の発見から、快感に関係する脳部位の活動を上手にコントロールできるようになれば、過剰掻破を抑えることができることから、そのような掻破の制御を目的とした新たな痒みの治療法開発につながることが期待される」と説明している。