半導体デバイスの進化はプロセスの微細化によって果たされてきた。最先端のロジックデバイスは2014年には16/14nmに到達しようとしている。しかし、その一方でASICやASSPなどのロジックデバイスの設計・製造コストは高騰を続け、数億円以上の費用がかかるようになり、その代替としてFPGAに注目が集まるようになってきた。今回は、FPGAベンダ大手Xilinxの日本法人であるザイリンクスの代表取締役社長であるSam Rogan(サム・ローガン)氏に、現在のFPGAを取り巻く環境、そしてXilinx(ザイリンクス)が進むべき方向性などを聞く機会をいただいたので、それをお伝えしたい。
--FPGAの用途はこの数年でどういった広がりを見せるようになったのでしょう?
Sam Rogan氏(以下、Rogan):以前からFPGAが普及期に入ったと言ってきましたが、ようやく本格的に動きが出てきました。
以前は通信がメインでしたが、最近は民生機器にも入るようになり、また車載機器での活用も注目を集めるようになってきました。
中でもセーフティ分野での活用が期待されていますけど、そうした意味で重要になるデバイスの品質管理は日本にも担当チームがあり、本社を牽引できるだけの力を持っていると感じています。
--品質管理というのは、デバイスが故障しない、という信頼性を保証するという意味ですかね?
Rogan:信頼性ももちろんそうですが、もし欠陥があった場合でも、どうやって安全を確保し、安全に自動車を動かし続けるのかといった冗長性の確保といった面などもありますね。
我々は、こちらも事故を起こしてはいけない飛行機でそうした取り組みをやってきた実績を持ちます。自動車では、飛行機ほどコストをかけることができないので、そこがチャレンジではあります。その1つの解として、デバイスに自己診断機能を持たせるといったことが考えられますが、そうなれば、産業機器などの用途でも安全性も向上させることができるようになるので、適用用途はさらに拡大できることとなります。
--自動車でFPGAというとナビとかカメラ処理、エンタメ分野といった付加価値分野のイメージがありますが、今語られたのは自動車の内部も内部の話ですよね?
Rogan:確かに数年前であれば、そうした分野にFPGAが適用されるようになってましたが、今はADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)だったり、クルーズコントロールとか、車車間通信とかそういった分野に適用したいというニーズが強いです。だからこその品質ということですね。
--そういったクリティカルな分野だと、デバイスの設計・製造を一貫して行うIDMの方が強みを出しやすいイメージがありますが。
Rogan:Xilinxでは逆にファブレスとして、ファウンドリに細かく仕様を伝え、共に取り組むことで不具合をなくす努力をしています。
私も半導体業界に長くいますが、Xilinxに来てから、品質の問題に悩まされることがなくなりました(笑)。
--確かに長いですね(笑)。でもADASとかの取り組みは欧米が先行してますよね。日本メーカーは対抗できるんでしょうか?
Rogan:ADASでもっとも進んでいるのが欧州ですね。コスト面でもティア1メーカーとしっかりと組むことで先行している。簡単には勝つことは難しいと思います。
でも、だからこそ、どうやってコストを下げて信頼性の高いシステムを実現するか、という課題に挑む必要がでてきて、そこでFPGAを活用しよう、という流れになるのです。