新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所は12月19日、CO2回収機能付き石炭ガス化複合発電(CCS-IGCC)向けシフト触媒の評価試験をパイロットプラント(EAGLE)で実施し、1000時間の連続試験を通じて新触媒の性能維持を実証したと発表した。

石炭ガス化ガス実証設備及び開発触媒(左)、EAGLEパイロットプラント(右)

シフト触媒とは、COを主成分とする石炭ガスを水蒸気と反応させCO2に転換するためのシフト反応で使用する触媒のこと。試験の結果、高効率発電とCO2回収の両方を実現できる可能性を示すことができたという。

一般にシフト反応は、低温で反応を行うほど水蒸気量が少なくなるため、運用温度を低温化すると水蒸気量を減らすことが理論的に可能となる。一方、シフト触媒の活性は高温ほど高いため、これまでは水蒸気量を増やすことで反応を進めてきたという。

今回のプロジェクトは、日立が開発した低温でも活性が高い触媒を適用することで、反応に使用する水蒸気量を低減し、発電効率の向上を目指すことを目的にしたもの。2013年1月にEAGLEパイロットプラント内に、石炭ガスで触媒性能を評価可能な試験設備を製作し、その後、電源開発(J-POWER)若松研究所の協力などにより現地試験を実施した。

EAGLEパイロットプラントでは、実際の石炭ガスを用いて本開発触媒と従来触媒の2種類の触媒を同時に評価し、開発触媒は従来触媒に比べて250℃以下の低温領域でも高いCO転化率(実際の触媒反応におけるCOのCO2への転換率)を有することを確認したという。また、反応用の水蒸気量を従来の3分の2に低減した条件(H2O/CO=1.2mol/mol)で1000時間の連続試験を行い、理論転化率(平衡状態におけるCOのCO2への転換率の理論値)を維持していることを確認した。

左は開発触媒と従来触媒の温度特性比較、右は1000時間実証試験結果(開発触媒)

NEDOと日立製作所は今回の結果を受け、CCS-IGCCの実用化に向けて高効率発電を実現しつつCO2回収を実現できる一定の可能性を示すことができたとしている。今後はこの技術を利用し、低炭素社会の実現を目指すという。