Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは12月17日、都内で同社が2013年に取り組んだ車載向け次世代ドライバ・アシスト・システム(ADAS)ソリューションの実装実験の成果、ならびに2014年の取り組みについての説明を行った。
2013年の取り組みは、SUPER GTにおいてスピードやエンジン回転数、ハンドル舵角などの車両情報と、車両の周辺情報、そしてドライバの発汗や筋電などの生体情報を取得し、クラウドを介して解析するというもの。レースごとに色々な取り組みを行い、最終的には各種データをリアルタイムで処理し、時間軸で結びつけることができるようになったという。
SUPER GT第8戦(ツインリンクもてぎ)にて撮影された走行中のバードビュー(サラウンドビューモニタ)の様子。高速走行ながら、きれいな映像を取得できていることがわかる |
こちらは会場を写したもの |
右の数字の羅列が生の送信データ。これをリアルタイムでクラウド上で加工することで、左のような見やすいデータに変えることができる |
この実装実験は2014年も継続・拡大して行っていくとのことで、これまでの取り組みに加え、新たに車両とガレージを無線もしくは有線でつなぎ、走行中に送りきれない大量のデータを自動的に取得し、それをクラウド上で解析し、関係各所にフィードバックをかけようという「Intelligent Garage」の取り組みが開始されることとなる計画だ。
こうしたさらなる車両やドライバの生体情報を活用することで、例えばディーラーにオイルのデータやバッテリー、タイヤの状況などを伝え、メンテナンスサービスにつなげたり、事故の未然防止ができるようになったり、ドライブレコーダーの情報と生体情報を組み合わせ、保険会社と連動させることで、事故などの状況説明を明確化しやすくしたりできるようになる。「いまやクルマにはさまざまなセンサが搭載されるようになり、そうした見方をすれば巨大なスマートフォンのような端末と見ることができる。そう考えればスマートフォンのような使い方もできるようになるし、新たな視点でのビジネスモデルの創出を図ることも可能になる」(フリースケールの執行役員で第三事業部 事業部長の村井西伊氏)とする。
実際のレースとしては、ピットインした時点か、ガレージインをした時点でそうした多量のデータを取得するか、といったタイミングは明確には語られず、「(主催者である)GTアソシエイション(GTA)のレギュレーションとして、ピット上で取って良いデータ、悪いデータがあり、例えば予選で得たデータをバックヤードでモニタでチェックして、本戦で使うといったことは考えている。ただし、ピットロード上でリアルタイムにそうしたデータを活用できるのかどうかについてはGTAの決定に従う」(SUPER GTに参戦するエー・ピー・アール(apr)の代表取締役会長である小山伸彦氏)という発現に留まった。
また、来期はIWASAKI OGT Racing GT-Rの車両(日産自動車のGT-R)から、メインの実験車両をPanasonic apr PRIUS GTの車両(プリウスGT)に移行させることを明言。GT-Rでのデータ収集も継続的に行いつつ、トヨタ自動車のハイブリッド車先行開発部隊もプリウスGTを使って技術開発を行っていることから、フリースケールのスタッフとトヨタのスタッフの交流などを交えた新たなコミュニティなどが生まれれば、と期待を示し、aprとしても深く関わりをもって取り組んでいきたいとするほか、Intelligent Garageについてもaprのピットだけでなく、SUPER GT全体に広げていければとし、ノウハウと蓄積していくことで、行く行くは市販車向けビジネスにも発展していければと未来像を語ってみせた。
なお、2014年のレースに対しては、まだ体制や車両、ドライバなどの詳細が決まっていないとのことで、2014年2月までにそれらを決定し、改めて発表する予定だとしている。