積水化学工業は12月3日、従来比で容量が3倍、生産速度が10倍、さらに高い安全性を確保した塗工プロセスによる大容量フィルム型リチウムイオン電池を開発したと発表した。
蓄電池システムや電気自動車で、リチウムイオン電池が使用されているが、さらなる改善が求められている。そこで、同社はこれまで培ってきた高機能フィルム技術をベースに、リチウムイオン電池の課題である重さ・スペース・安全性・容量を解決するために、電池材料および電池生産プロセスの研究開発を進めてきた。
リチウムイオン電池は正極にリチウム金属酸化物、負極にグラファイトなどの炭素材、そして、電解液を用いるのが一般的な構成となっている。このうち、電解液はリチウムイオン電池の安全性を高める上で障害となっており、様々な研究機関によって電解液の固体化が検討されている。しかし、性能と生産性に課題があり、現在も電解液が主流となっている。
積水化学は、電解液のゲル化に着目し検討を進めてきた。そして今回、ゲルタイプ電解質として従来比約10倍の高イオン伝導性を有する有機ポリマー電解質材料を用いることにより、連続塗工プロセスによる電池セル高速連続生産と高い安全性を実現する見通しを得たとした。さらに、その性能を最大限発現可能な高容量ケイ素系負極材料も新たに開発し、電池セルにて900Wh/Lの高容量化を実現する見通しを得たという。
この軽量・フレキシブル・薄型・長尺・大面積でありながら実用性能を有する大容量フィルム型リチウムイオン電池により、自動車・住宅・電子機器などの最終製品における形状設計の自由度が向上するとしている。
今後、製品化に向け改良を重ね、2014年夏をめどにサンプル提供を開始し、試作・評価を経て、2015年度に上市予定としている。