カネボウ化粧品 香料研究室と奈良教育大学(奈良教大)の福井一 教授らの研究グループは12月9日、香りと視覚の感覚間相互作用の観点から、特定の香りが女性の顔の視覚的印象に影響を与える効果に関する研究を行った結果、香りの種類により、視覚が影響を受けていることが確認されたと発表した。特に、香りの嗜好性や残り香などを考慮してつくられた「シャンプーの香り」や、一般的なシャンプーの香りに用いられる香り素材である「白バラ」や「ホワイト・ムスク」の香りは、より女性の顔を魅力的に見せる効果があるが、タバコの香りは女性の魅力を低減させることが判明したとする。
今回の実験は、2013年1月~3月末の間、奈良教育大学にて、健康で嗅覚が正常な男性32名(平均年齢:22.7歳)を対象に行われた。被験者は、あらかじめ香りを漂わせた部屋に入室し、1分ほど香りを嗅いだ後、スクリーンに映し出された女性の顔写真を30秒間見て、その写真に対する魅力度の評価を実施した。
用いられた女性の顔写真は3種類で、いずれも日本人女性70名の顔写真をアベレージング(平均化法)により作成したもので、組み合わせを変え、事前に、今回の実験の被験者とは別の10名(男女各5名)が魅力度を評価し、それぞれ「美人顔(バランスの整った顔)」、「平均的な顔」、「それ以外の顔」とし、対象者の評価と比較を行った。
具体的には、6種類の香り(カネボウ化粧品が長年販売してきたローズを主としたシャンプーの香り、同じくカネボウ化粧品が販売するナルシスやミューゲを主としたシャンプーの香り、白バラ(ローズ・アルバ)の香り、ホワイト・ムスクの香り、タバコの香り、無臭)と、3種類の顔写真の組み合わせ(18パターン)を、順序をランダムに呈示し、それぞれの顔写真の魅力度を5段階で評価。その結果、シャンプーの香りを嗅ぎながら女性の顔を見た際は、無臭の時に比べ、約10%ほどその女性の顔が魅力的に映るという評価となったほか(無臭時に対して、1つ目のシャンプーの香り呈示時で110.4%、2つ目のシャンプーの香りの呈示時が109.1%の魅力度となった)という。
また、香りと視覚の感覚間相互作用を見た結果、香りの種類により、視覚が影響を受けていることも判明したという。今回の実験で使用したシャンプーの香りや、白バラの香り、ホワイト・ムスクの香りは、男性に対し女性の顔を魅力的に見せる効果があった一方、タバコの香りについては、女性の顔の魅力を大きく下げるという結果が得られたとする。
さらに、魅力度が高いバランスの整った顔の女性の画像に対しては、 白バラとホワイト・ムスクの香りが特に魅力度が増加することが判明したとする。この結果について研究グループは、白バラとホワイト・ムスクは、単独でも高い香りの嗜好性を示し、鎮静効果などの生理・心理効果が示されており、個性的で特徴のある印象を被験者に与える香りなため、バランスの整った顔の画像に対しては個性的な香りでも許容され、女性をより一層魅力的に見せる効果を有していることが考えられるとコメント。
加えて、女性が香水を付けるのは、自分が好きな香りを楽しむためということもあるが、洋服と同じように、自分を引き立ててくれる「一種のおしゃれ」であるとみることができるのではないかとしているほか、「残り香」による間接的な芳香は、平安時代から貴族女性の間で用いられてきた手法であるが、今回の研究から、実際に女性を魅力的に見せる効果があることが示されたとしている。