ARMは、IEC 61508、ISO 26262などの安全規格に適合し、認証を取得するためのドキュメントを集めたパッケージとして、「ARMコンパイラ・クオリフィケーション・キット」を発表した。
同キットは、ARMコンパイラ・ツールチェーンの堅牢性と成熟性を実証しており、ツールチェーンの採用を正当化する証拠を、何カ月もかけて独自に作成していた時間を節約することを可能とするもの。すでにARMコンパイラ・ツールチェーンは、産業制御、車載、鉄道、医療アプリケーションの分野で、安全認証を取得している多様な製品にすでに使用されており、同キットでは、セーフティ・クリティカル・アプリケーション開発者向けの利用ガイドライン、安全関連アプリケーションに対するARMコンパイラ・ツールチェーンの適切性を示す検証の証拠を提供することで、製品上で動作するソフトウェアの認証取得を容易化することを可能とする。
また、ソフトウェア開発者、企業の安全管理者、安全認証評価担当者といったユーザーは、推奨されるベストプラクティスが実行されていること、およびベンダが開発した試験と不具合の報告が分析され、必要な緩和策が講じられていることを示す証拠として、クオリフィケーション・キットを使用できる。
ちなみに同キットは、安全マニュアル、不具合報告、試験報告、開発プロセス資料の4点で構成されている。安全マニュアルは、推奨されるユースケースや潜在的なエラーを緩和する対策など、安全関連のプロジェクトにおけるツールチェーンの構成方法を記載したものとなっている。不具合報告には、国際的なテストやユーザーからの報告で発見された既知の不具合や回避策のリストが含まれている。試験報告には、コンパイラがISO C90、C99のC言語準拠入力に基づいて正しい出力を生成することを証明するC言語準拠試験の結果が記載されている。開発プロセス資料には、ツールチェーンの作成に使用された社内のソフトウェア開発プロセスの説明が記載されている。これには、要件と不具合管理の手続き、コンフィギュレーション管理の手続き、ソース・コード・コミットと不具合や要件のトレーサビリティ、検証手続きが含まれている。
ツールチェーンを社内で評価した後は、長期的なメンテナンスによってその投資を保護する必要がある。オプションのARMコンパイラ・エクステンデッド・メンテナンス・プログラムは、特定のコンパイラ・バージョンに関するメンテナンス情報を5年、あるいは必要に応じてさらに長期間提供する。
なお、同キットとエクステンデッド・メンテナンスは、現在提供中のARMコンパイラ5.04に対応している。ARMコンパイラ5.04は、2013年12月よりDevelopment Studio 5(DS-5)、2014年1月よりKeil MDK-ARMの一部として提供される。