11月22日、東京にて「Zabbix Conference Japan 2013」が開催された。「Zabbix」とは、Zabbix SIAにより開発・リリースされている監視ソリューションだ。 今や仕事の効率化、生産性向上、円滑なサービスの提供にネットワークは不可欠の存在となっているが、当然業容が大きくなるほど、ネットワーク機器やアプリケーションにかかる負荷、それを運用する人的負荷が大きくなっていく。そうした中でトラブルの防止や原因究明、リソースの有効活用などを確実に行ってゆくには、ネットワークを監視し、情報を収集するソリューションが欠かせない。
2001年に登場した監視ソリューション「Zabbix」は、オープンソースでありながら、手厚いサポート体制、トレーニング体制を整え、ユーザーに密着したサービスで、着実にシェアを伸ばしてきた。
そのサービスのひとつであり、「Zabbix」の進化にとっても重要なのが、「Zabbixカンファレンス」だ。ユーザー、エキスパートが「Zabbix」に関わる知識、経験、成功事例などを共有するために集まる年次イベントとして、例年、Zabbix社 本社があるラトビアの首都リガで開かれてきた。
そのカンファレンスが今回東京でも開催されることになったのは、2012年に日本支社が設立されたから、というだけでなく、日本国内からの強い要望があったからだ。
高まるZabbix人気と、その秘密
その要望の強さは、250名以上という参加登録者数からも伺える。オープニングスピーチに立ったZabbix SIA代表Alexei Vladishev氏が、「実は今年リガで行ったカンファレンスよりも参加者が多く、大規模なものになった」と言うように、日本企業が「Zabbix」に寄せる期待は大きい。 同日講演を行ったZabbix Japan代表の寺島 広大氏によれば、2011年頃から、オープンソース監視ソフトの中でも「Zabbix」への注目度は高まっており、商用ソフトの人気にも匹敵する勢いを見せているという。 「商用製品と比べられるだけの機能とクオリティを持ち始めてきた、ということだと思っています」(寺島氏)
Zabbix Japanが22社ものオフィシャルパートナーを持つに至ったのは、「Zabbix」がフルオープンソースであり、試してみたいことに無料でチャレンジできること、そしてオフィシャルサポートがあることが大きな要因だろうと寺島氏は言う。 「Zabbix Japanの設立目的は、徐々に増えていた日本のパートナー様に対して、日本語で、そして日本の時間帯にあわせて支援を行うためでした」
万が一のトラブルや、カスタマイズ中の試行錯誤、各種トレーニングに、母国語で対応してくれる体制があることは、日本企業の担当者にとって心強く、それが人気の一因になっていることは間違いないだろう。実際Zabbix Japanが開催したトレーニングへの参加者にアンケートを取ったところ、96%が「満足した」と回答しており、また日本語が通じるという安心感からか、パートナー企業を通して寄せられる問い合わせやバグ調査、機能追加の要望は、Zabbix Japanの設立から1年間で数百件にものぼった。
フィードバックが「Zabbix」を進化させる
特定ユーザーからの要望で追加した機能が次のバージョンに反映され、その機能を全ユーザーが利用できるようになる、というのもフルオープンソースである「Zabbix」の特長だ。 11月にリリースされたばかりの「Zabbix 2.2」の目玉となっているVMwareサポート(後述)やWeb監視テンプレートも、もとは特定ユーザーからの要望で追加されたものだという。
「こうした成果の積み重ねがあって、『Zabbix』は良くなってきていると実感しています。新機能の要望やバグ報告による修正、そういうものをきちんとフィードバックして、開発に活かされるようにすること。当然と言えば当然ですが、この開発サイクルを守っていくことが重要だと思っています。そのためには皆様から多くのフィードバックをいただきたい。いろいろなユーザー様に使っていただき、そこで出てきた意見をもとに、次のバージョンを生みだしていきたいのです」(寺島氏)
総数100以上! 「Zabbix 2.2」の新機能と改善点。そして「2.4」へ…。
Zabbix SIA代表かつプロダクトマネージャを務めるVladishev氏からは、「Zabbix 2.2」で追加・改善された機能の紹介が行われたが、「フィードバックで進化する」という寺島氏の話を裏付けるように、全部で100以上の項目が盛り込まれているという。ここでは当日紹介されたものの中から、いくつかを採り上げよう。
■VMwareサポート VMware 社の仮想化ソフトvCenter、vSphereに対応し、仮想環境の監視が可能に。 オートディスカバリ機能により「Zabbix 2.2」をインストールすれば、自動でハイパーバイザーやVMゲストを検知、モニタリングをスタートできる。VMware製品の監視設定に必要なテンプレートも予め用意されている。
■大幅なパフォーマンス改善 毎分300万項目のチェックを行いながら、パフォーマンスは「2.0」に比べ2~5倍高速に。また「Zabbixサーバー」で生成するSQLステートメントの削減、Value Cacheの導入によるトリガー処理の高速化、Webインターフェイスの反応性・速度向上も実現
■メンテナンス性の向上 不明なトリガー、取得不可のアイテムといった内部イベントの通知機能を搭載。 旧バージョンにあった様々な制約は大幅に緩和。例えば同一名を持つアプリケーションでもテンプレートにリンクできるようにして、リネームの手間を削減。
■強化された内部監視 プロキシ内部のモニタリングを行うことで、容易に「ヘルスチェック」や、パラメータの最適化が可能に。また「Zabbix」の役割をシェルで表示し、何が実行されているのかをコマンドラインから把握できるように。
■異なるソースからのデータ取得 「Zabbixエージェント」の改善により、Windows WMIを始め、Linux、Unixなど多彩なプラットフォームの監視が可能に。
■大幅に自動化されたアップグレード 「2.0」から「2.2」へのアップグレードにおいては、データベースのパッチ作業が自動化され、簡単に。さらにエージェントに対しての下位互換性を確保しているため、先にサーバーとプロキシだけをアップグレードすることが可能。エージェントの数が多い環境でも、余裕を持ってアップグレード作業を進めていける。
その他の機能・改善ポイントについては、次のURLに詳しいので、関心を持たれた方はアクセスすることをお勧めする。
What's New in Zabbix 2.2 http://www.zabbix.com/whats_new.php
Vladishev氏からは機能紹介の他に、2014年11月にリリース予定の次バージョン「2.4」についての言及もあった。曰く「開発は現在進行中です。こんな機能が欲しい、という要望があればZabbix Japanを通して連絡をしていただきたい。次バージョンの仕様について影響力を持っているは、皆様なのです」。
Zabbix Japan、新製品と今後の取り組み
当日は、寺島氏から「新しいこと」として、Zabbixのアプライアンス製品であるプロキシサーバー「Zabbix Enterprise Appliance ZP-1200」(11月22日発売)と、仮想サーバー「ZS-V200」のリリースも発表された。
「ZP-1200」は省電力・省スペース・省発熱を実現しながら、多彩な機能を搭載している。監視処理を「ZP-1200」に仲介させることで、リモート拠点やNAT、ファイアーウォール越しに監視できるようになり、またVPN機能により(Zabbixには未実装)、クラウド上のサーバーに安全にデータを送付することが可能だ。
仮想サーバー「ZS-V200」は、VMware、Xen、KVMに対応、MySQL5.6+Nginx+PHP-FRMを利用し、「Zabbixサーバー」として簡単に導入でき高いパフォーマンスを得ることが出来る。こちらは近日中に無料でダウンロード配布の予定だ。
さらに寺島氏は、サポート体制についても新たな取り組みを行うと語った。
「これまでのサポートを拡張し、名称も"Zabbix Enterpriseサポート"と変更します。内容的にはセキュリティFIXの早期アナウンス、パートナー様から寄せられる質問を共有できるナレッジベースの構築、周辺ツールの提供などを含めることで、さらなるサポート、サービスの充実に努めていきたいと考えています」
より手厚くなるZabbixのサポートが、国内での人気に拍車をかけることになるかもしれない。
以上、7時間に及んだ「Zabbix Conference Japan 2013」の中から、Zabbix SIA、Zabbix Japanの講演の内容をかいつまんで紹介したが、当日は他にもパートナー企業からの導入事例紹介や、製品紹介などが行われた。次回はそれらをレポートする。