アドビ システムズは、クリエイターのためのイベント「Create Now / PLUS ONE DAY」を開催した。本レポートでは、「Photoshop」や「Lightroom」といったデジタルイメージング領域のソフトウェアにおける実務経験を通じて身に付けた専門技術を、世界各国のユーザーに創作のヒントとして伝えてくれるエバンジェリストであるジュリアン・コスト氏によるセッション「アドビシステムズ ジュリアン・コスト - PHOTOSHOP CCとLIGHTROOM 5 - そのヒントとテクニック」の様子をお届けする。
同イベントのキーノートに引き続き、コスト氏はスチームパンク風のコスチュームに身を包んで登場。このイベントに際して初めて来日したコスト氏は、写真家向けソフト「Lightroom」のTipsを中心に紹介してくれた。コスト氏が最新版の「Lightroom 5」から搭載された新機能の中でも特に強力だと感じているのが「スポット修正ツール」だという。実際にサンプルを用いて、あっという間に写真に修正を施す様を実演して見せた。
引き続き、コスト氏は写真を印象的に仕上げるためのテクニックを紹介してくれた。まず切り抜きツールで写真を1:1の比率で切り取り、灯籠に視線をフォーカスさせるために、Lightroom 5から新たに搭載された「円形フィルター」を選択した。
このフィルターではCamera Raw内で実行できる色温度や色かぶりなどのコントロールが可能で、ブラシもプリセットから全くの新規のものまで選ぶことができる。このツールで効果を加えたいエリアを選択し、露光量を調整。さらに、灯籠に灯がともったように見せるため、追加で範囲選択を行った。
コスト氏は、Camera Rawを活用するメリットについて、「複数の効果を与えても演算自体は1回で行うので画像の劣化がないところ」とコメント。また、Lightroomを編集に使う利点として、画像加工で加えた作業をすべてヒストリーとして記憶されているということを挙げた。これは、元画像と最終形とでかけ離れたイメージになってしまっても、あるいは、作品を修正する際においても非常に役に立つ機能と言えるだろう。
そのほかにも、Lightroomを使った画像管理に関するTipsが紹介された。ポートフォリオ用、クライアント提出用など、用途に合わせて写真をコレクションとしてめることができるのだが、保存してある場所はバラバラであることも多い。そういった場合でも、コレクションとしてカンタンに管理できる機能を教えてくれた。Lightroom 5からの新機能に「このコレクションを対象コレクションに設定」というオプションが加わり、便利だったショートカットがさらに便利になった。
加えて、Lightroomの「スナップショット機能」で編集状態を記録した写真を、Photoshopのスマートオブジェクトとして直接開くことができると解説。そして、仮に編集を加えたとしても、画像の情報を失うことがないメリットを語ってくれた。
例えば、Photoshop上で画像にさまざまな編集を加えていても、Lightroomでスナップショットを作成しておいた段階へと簡単に切り替えることが可能だ。そのため、Lightroom側でカラーやセピアなど複数パターンのスナップショットを用意しておけば、Photoshop上で読み込むスマートオブジェクトを入れ替えることで、異なる状態の写真に同じ加工を施すことができる。
この画像をPhotoshopで加工。ここではスマートオブジェクトとして開く方法を選択 |
画像に様々な効果を与えていく |
スナップショットを活用することで、元の写真を入れ替えて同じ加工を施すといったことも可能になる |
加えて、写真を油彩の絵画のように仕上げるテクニックも披露してくれた。「フィルター」メニューから「油彩」を選択すると、数値を変更するだけで非常に印象的な効果を与えることができる。コスト氏は、「私には画を描くテクニックはないけど、Photoshopの中にノウハウが詰まっている」と、にこやかに語りながら実践してくれた。
全体的に淡い印象を受ける写真の橋の部分にフォーカスさせるべく、スマートフィルターを使用。橋の部分にマスク処理を施し微調整を重ねて最終的に完成したのがこちらの画像 |
ビデオ編集もPhotoshopで自在に行えるということも実践して見せてくれた |
そのほか、油彩フィルタをかけた後に披露された、スマートオブジェクトを入れ子で使用するというアイディアは、多くの聴衆にとっても新鮮だったようだ。そして最後に、ビデオ編集で使えるTipsを紹介したところで、コスト氏にとって日本で初めてとなる講演は幕を閉じた。