東京大学 宇宙線研究所(ICRR)は11月22日、ICRRを中心とする国際研究チームにより、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ電波望遠鏡の観測データを使い、過去に存在した巨大天体「ヒミコ」が詳細の一部が明らかになったことを発表した。

ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ電波望遠鏡の観測で得た知見を元に描いたヒミコの想像図。(C)国立天文台

「ヒミコ」とは、宇宙が8億歳の頃(現在の宇宙年齢の6%)に存在した巨大天体。2009年にすばる望遠鏡が発見し、5万5000光年ほどの大きさのガス雲を持つという性質を明らかにした。ヒミコという名前は日本の弥生時代における倭国の女王「卑弥呼」に由来している。

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ電波望遠鏡を使ってヒミコの高感度観測を行ったところ、ヒミコの中に3つの星の集団が隠されていることが判明。それらの活発な星形成活動は、ヒミコの巨大ガス雲を輝かせるエネルギー源になっていると推測できるという。また、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像からヒミコの中で三体合体が起こっていることが分かったという。

研究チームはアルマ電波望遠鏡の詳細観測をするなどして、今後もヒミコの実態を明らかにするための研究を続けるとしている。なお、本研究成果は米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載される予定。

ハッブル宇宙望遠鏡、すばる望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡のデータから作成されたヒミコのカラー合成写真。左側のパネルはハッブル宇宙望遠鏡が捉えたヒミコとその周辺領域。ここでヒミコは中心の四角形の中に位置する。右側の2つのパネルはヒミコの拡大画像で、上がハッブル宇宙望遠鏡の画像、下がハッブル・すばる・スピッツァー望遠鏡の画像。ハッブル宇宙望遠鏡の画像ではWFC3カメラにより撮影された0.98, 1.25, 1.6ミクロンの近赤外線3バンドのデータをそれぞれ青、緑、赤で表示している。ハッブル・すばる・スピッツァー望遠鏡の画像では、ハッブルWFC3カメラの3バンドで合成した近赤外線を緑、すばるシュプリーム・カムで捉えたライマン・アルファ輝線を青、スピッツァーIRACカメラで得られた3.6ミクロンの赤外線を赤で表示している。(C)NASA, ESA, 東京大学(大内正己)