米セールスフォース・ドットコムは、2013年11月19日~11月21日(米国時間)の3日間、米カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターにおいて、「Dreamforce 2013」を開催している。

同社では、イベント開催前日となる11月18日に、Salesforce1を正式発表しており、今回のDreamforce 2013は、Salesforce1にフォーカスしたものとなった。

「Dreamforce 2013」のイベント会場の様子

Salesforce1は、「営業、カスタマーサービス、マーケティング用アプリケーションを変革する、ソーシャルおよびモバイル対応のクラウド型カスタマプラットフォーム」と位置づけており、「いまは、大きな変革を迎えている時期である。『顧客のインターネット(Internet of Customers)』の時代において、最適なプラットフォームを提供しなくてはならない。開発者やISV(独立ソフトウェアベンダー)、管理者、エンドユーザー、顧客に対して、ソーシャル、モバイル、コネクテッドクラウドへの移行を可能にするCRMプラットフォームになる。単なるSalesforceの新しいバージョンではなく、エンタープライズコンピューティングの方向性を示す新たなビジョンとなる。Salesforce1への進化は、秘密裏に進めてきたものであり、昨日からロゴが変わった。セールスフォース・ドットコムの既存ユーザーは自動的にSalesforce1にアップグレードすることになる。これによって、最もパワフルなコンピューティング環境を、いつも持ち歩いているのと同じことが実現される」(米セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏)とする。

Dreamforce 2013は、今年で11回目を迎える同社のプライベートイベント。2003年の第1回目の参加は、わずか1,300人の規模だったが、今年は13万5,000人が事前登録。昨年の9万2,300人を上回る過去最高となった。また、展示会場では350社以上が出展し、基調講演のほかに1,250以上のセッションが開催される予定だ。

ベニオフCEOは、開催初日に行われた基調講演において、約2時間30分に渡って講演。

米セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

「コンピューティングの世界は、いま第3の波が訪れている。第1の波がメインフレーム、第2の波がクライアント/サーバによるものであったが、第3の波は、すべてのものがインターネットで接続される時代である」とし、「ソーシャル、モバイル、クラウドを活用することで、すべての企業が、すべてのアプリケーション、従業員、パートナー、製品、デバイスと顧客をつなげることができる。世界はあらゆるものがつながったコネクテッドワールドになりつつあり、毎日数100万の新しい製品がインターネットに接続されており、2020年までに、500億を超えるモノがネットに接続されることになる。Internet of Customers時代のカスタマプラットフォームがSalesforce1 Customer Platformである」などとした。

基調講演や報道関係者向けのセッションを通じて、ベニオフCEOが事例として何度もあげていたのが、フィリップスの「歯ぶらし」である。

ベニオフ氏が愛用しているもので、その歯ぶらしには、Wi-Fi機能が搭載され、GPSによって利用者の場所もわかるようになっているという。利用者が、その歯ブラシを利用して毎日欠かさずに歯を磨いているかどうかがわかり、それをもとに歯医者が指導するという。 「先日、日本に行くのに、歯ブラシを持って行くのを忘れたため、きちっと歯を磨いていないと指摘された。健康増進にもつながるといったように、モノがインターネットにつながることで、新たな可能性が生まれる」とした。

Salesforce1は、こうした時代に適したクラウドプラットフォームだとする。

Salesforce1では、「Salesforce1 Platform」に加えて、「Salesforce1 Sales Cloud」、「Salesforce 1 Service Cloud」、「Salesforce 1 ExactTarget Marketing Cloud」を提供。APIを10倍に増やし、213のコールメソッドを提供。「モバイルで活用するためには、APIを増やすことは不可欠だった」(ベニオフCEO)とコメントした。

ISVは、AppExchange上で次世代アプリの開発やマーケティング、販売が可能であり、既存のSalesforceアプリケーションは、Salesforce 1でも利用できるという。EvernoteやKenandyなどのISVは、すでにこのプラットフォームを基盤にしたモバイル対応アプリケーションを構築し、Salesforce1 AppExchangeで提供している。

さらに、CRM管理者向けには、Salesforce 1 Admin Appを提供。Salesforce 1では、iOS版およびAndroid版のモバイルアプリケーションもが提供され、各企業が運営するカスタムアプリケーションを含むSalesforceの全ツールを統合させるという。

eコマース用のアプリケーションは、レガシープラットフォーム環境の数分の1の時間で構築できるほか、既存のすべてのSalesforceアプリケーションをモバイル化およびソーシャル化し、将来に渡って活用できるという。Salesforce1では、1000万を超えるVisualforceページとカスタムアクションがモバイル対応となっており、Salesforce1 Customer Platformを基盤に構築されているSalesforce1 Mobile Appによって、ユーザーは場所を問わずあらゆるデバイスからSalesforceへアクセスして利用することができる。

そのほか、Salesforce1 Communities、Heroku1、ExactTarget Fuelを新たに提供することになる。ExactTarget Fuelでは、自動化したカスタムマーケティング・キャンペーンを通じて、大規模な1対1のエンゲージメントを実現することが可能になるとした。

基調講演では、共同創業者であるパーカー・ハリス氏が、かつての人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公のひとりであるドクに扮して、まるで未来からやってきたように、最新のEVスポーツカー「ステラ」に乗って登場し、Salesforce1は未来からやってきたサービスであり、未来に帰るためのサービスであることを示してみせた。

ベニオフCEOは、「1999年に開発したこれまでのクラウドサービスは、デスクトップやノートPC向けには最適だった。これに対して、Salesforce1は、新たなカスタマプラットフォーム。新たなデマンド、新たなユーザーインターフェースに対応したものとなる」と述べた。

一方、基調講演では、米HPとの協業によって、「SUPERPOD」と呼ばれるコンバージドインフラストラクチャー製品が発表された。米HPのメグ・ホイットマンCEOは、「世界有数といえるHPのコンバージドインフラストラクチャー製品がSUPERPODである。お互いの強みが発揮できる協業。顧客もベストなサービスを選択できることになる」などと述べた。