Microchip Technologyは11月18日(米国時間)、Imagination Technologies(IMG)が提供するMIPSプロセッサコア「microAptiv」を採用した32ビットPICマイコン「PIC32MZシリーズ」を発表した。また、併せて同社32ビットマイコンを用いた開発を容易化することを目的としたファームウェア開発フレームワーク「MPLAB Harmony」の提供を開始したことをも発表した。

PIC32MZは、PIC32マイコンの中でも最上位に位置づけられる製品群で、前世代品となる「PIC32MX」に比べ、microAptivの採用により性能を3倍向上させたほか、フラッシュメモリはRAMを4倍の容量に増大させており、330DMIPSおよび3.28CoreMarks/MHzの性能を実現している。

PIC32MZの位置付けと機能ブロック図

また、フラッシュメモリは1MB×2の2MB構成で、2MBとして利用できるほか、1MBずつ独立して動作させることも可能なため、別々のプログラムを動かすといったことも可能となっている。

さらに、命令セットの効率化により、競合製品比でコード密度を30%改善しており、ターゲットとするコンシューマオーディオやFA/ビルオートメーション、スマートメーター、リアビューカメラなどの分野で軽量ながら高パフォーマンスを発揮することが可能だとする。

PIC32MZの特徴とmicroAptivコアの概要

加えて、インタフェースとして、10/100 Ethernet MAC、Hi-Speed USB MAC/PHY、デュアルCANポート、UART×6、SQIなどを搭載しているほか、ハードウェア暗号化エンジンを搭載したモデルも用意。これにより、クラウドなどの分野でも安心して用いることができるようになるとしている。

PIC32MZを搭載したスターターキットの概要(左)と実物の画像(右)

スターターキットと組み合わせて用いる「マルチメディア拡張ボードII」の概要(左)とその実物の画像(右)。マルチメディア拡張ボードIIを用いることでさまざまな画像を描画することが可能となる。VGAに対応した30万画素のカメラも搭載しており、撮影した画像を使用することもできる

同社はIMGに買収される以前のMIPS Technologiesの時代からMIPSアーキテクチャの開発に協力してきた。microAptivを採用したのも、こうした経緯からであるが、AptivシリーズにはmicroAptivのほかに、より上位の「interAptiv」、「proAptiv」が用意されており、性能を求めるのであればそちらを選択したほうが良いが、今回はmicroAptivの採用となった。このことについて、同社Director,MCU32 DivisionのRod Drake氏は「ターゲットとした分野で要求される電力と性能、実行効率などが最適だったため」と説明する。また、IMGではAptivの後継となるコア「Warrior」としてハイエンドの「P-Class(すでにP5600を発表済み)」、ミドルレンジの「I-Class」、そしてmicroAptivの後継となる「M-Class」、ハイエンド扱いとなる予定の「S-Class」の開発を進めていることを公開しているが、同氏は「MIPSアーキテクチャのロードマップにタイトに追随していく予定はないが、引き続きMIPSアーキテクチャの開発には協力して取り組んでいく」とし、今後の検討材料にはなるが、当分の間はPIC32MZと、前世代のPIC32MXの製品拡充を図っていく姿勢を示した。

IMGの発表資料によるMIPSコアのロードマップ。次世代コアとなるWarriorのP5600については最初のライセンス供与がすでに行われているという

一方のMPLAB Harmonyは、32ビットマイコン向けファームウェア開発統合フレームワークという位置づけで、同社が提供する開発環境(IDE)「MPLAB X」内で動作する。

統合フレームワークということで、ミドルウェア、ドライバ、周辺モジュールライブラリ、RTOSなどが提供されるが、これらは同社が開発したものだけでなくサードパーティが開発したものも含め、同社が検証を行った後に提供されるほか、サポートなどの窓口も担当するため、ユーザーは安心して設計・開発にそれらを適用することができ、開発の容易化を図ることが可能になる。

「Harmonyの活用により、すでに品質が保証されたミドルウェアなどを活用することが可能となる。70社を超すアーリーアダプタによる評価の一例として、Harmonyベースのコードをシステムの40%に適用してもらった結果、開発コストを24%削減できた例もある」とHarmonyによる複雑化する開発現場の問題を解決できること、ならびに「コードはMicrochipが検証/デバックし、相互動作可能であることを確認しているため、そのままリユースすることが可能であるほか、フレームワーク内でカスタマが独自でコードを開発することで、そのリユース性を向上させることも可能」と、開発効率の向上が可能であることも強調する。

今後の方向性としても、対応機能の拡充をサードパーティも含めて図っていく方針としており、「どういったライブラリが必要かといったことに関しては、カスタマからのニーズのフィードバックを受けてから考えるが、将来的にはすべて同フレームワーク内だけで開発を行えるような環境にしていきたい」と意気込みを語る。

なお、定期的なアップデートを継続して行っていき、ライブラリの拡充やバグフィックスを図っていく方針で、2014年第1四半期に第1弾のアップデートが予定されているという。「現在、まだ一部β版として提供しているライブラリなどがあるが、次回のアップデートでそれらも商用版として提供されることとなり、実質的な1.0へと引き上げられることとなる。今後も魅力的なソリューションとして提供していくことで、カスタマの開発の手助けをしていければ」と同氏は将来的な方向性を示していた。

MPLAB Harmonyのブロック図。カスタマが実際に動かすこととなるアプリケーションレイヤ以外の部分すべてがHarmonyで提供されることとなる。また、サポートされていないOSもOSAL(Operating System Abstraction Layer)を介することで利用が可能となる

Harmonyの機能拡充のロードマップ(2014年3月頃に予定しているアップデートの内容)。基本のフレームワークと提供されている大半のライブラリは無料だが、いくつかのライブラリがプレミアム版(有料版)として提供されることとなる