Intelは11月15日、都内で会見を開き、同社のInternet of Things(IoT)に関する取り組み、ならびにデジタル・サイネージ広告のコンテンツ管理ツール「インテル リテール・クライアント・マネージャー(RCM)」の国内提供の開始を発表した。

登壇したIntelのセールス&マーケティング事業部 副社長,エンベデッド・セールス・グループ,ゼネラル・マネージャーを務めるリック・ドワイヤー氏は、「Intelが持っている技術的なさまざまな資産はIoTを変革させていくためのものであり、IoTの活用をビジネスの変革を呼び起こすための起爆剤にしていきたい」と語り、半導体プロセス技術のほか、McAfeeによるセキュリティ技術、Wind RiverによるOSをはじめとするソフトウェア技術まで、総合的に幅広い技術資産を提供できるのはIntelだけであることを強調した。

また、Intelの観点から見たIoTは、組込機器がネットワークに接続し、互いにコミュニケーションを行うといった単純なものではなく、そこにセキュリティを担保し、収集したデータを解析し、そこから価値を生み出し、それをカスタマの実際の行動に落とし込み、サービスとし、そこから新たな収入を得るためのソリューションという位置づけとなっており、「分野横断的な技術であり、いかなる市場セグメントに対しても、こうした技術の活用によるデータの収集から、その分析、そしてそこからの価値抽出を行い、新しいビジネスモデルの創出に結び付けていく」としており、あくまでIoTとはデータであり、そこから生み出されるサービスであるとする。

こうした一連のサービスの実現には「デバイスからクラウドに至るまでの接続性とソフトウェアの拡張性」、「新たな体験とビジネスモデルを可能にするアナリティクス」、そして常に安全性を維持する「セキュリティ」の3つの技術が必要になるという。

Intelの考えるIoTの姿とそれに対応するソリューション

これらの組み合わせ、特にこれまでスタンドアロンで稼働していた組込機器がネットワークに接続できるようになれば、そこに安全性の担保が求められることになる。「Intelの戦略としては、持てるさまざまな資産を集約し、それをシリコン(半導体デバイス)からOSに関連する技術、そしてセキュリティまで展開していき、"ゲートウェイ"を中心に活用するソリューションとして提供し、それをベースにソフトやセキュアなクラウドの活用に結び付けて行ってもらう」という方向性を示す。

さまざまな機器/センサで生成されたデータを収集し、ネットワークに流すゲートウェイを中心にIoT市場の攻略を目指すとしている

これは基本的なIoTに対する現時点の同社の考え方としては、クライアント端末に接続されたそれぞれのセンサ機器などまではx86でカバーするのではなく、そうしたセンサなどで得られた各種のデータをクライアントやネットワークで接続された先にあるデータセンターなどで分析・解析を行う部分に自社製品を適用してもらうという意味合いでのゲートウェイとなる。組込機器は電力問題がシビアであるため、これまでもx86プロセッサは携帯機器や小型機器などでは活用されづらいという流れがあったが、ここは同社も重々承知しており、QuarkやIoT向けAtom(E3800シリーズ)の提供を開始したとしても、それだけではセンサ部分や携帯機器分野に簡単に入りこめることはないだろうということで、そうして集約されたデータを分析・解析するパフォーマンスが求められる分野で橋頭堡を獲得しようというものとなっている。

こうした動きを後押しするために、同社は新たな事業部として、「IoTソリューション事業部」を設立したとIntel Internet of Thingsソリューション事業部,セグメント&ブロード・マーケット 事業本部長であるジム・ロビンソン氏は語る。

同事業部では、Wind River製品と従来のIntelインテリジェントシステムグループの統合を図っていくことで、これまで組み込み分野向けに提供してきた技術をベースにIoT分野に向けた高い価値の創出とその提供を図っていくこととなる。

また、「日本はIoT分野を牽引する良い環境が整っている。例えばWiMAX2の提供も始まり、LTEのカバー率もすでに世界の中でも高い地域となっている。近い将来、LTE-Advancedの提供も開始される見込みだ。しかも2020年に向けて、さらなるインフラ投資も期待されている」(インテル 常務執行役員 クラウド・コンピューティング事業本部 事業本部長を務める平野浩介氏)と日本市場がIoT分野を牽引する役割を強調。「現在、世界でネットワークに接続されている機器の多くがPCやスマートフォン。しかし、今後のIoTデバイスの伸びはそうした今ネットワークに接続することで伸びている機器よりも大きい。ここのビジネスを取るかとらないかでは、大きく変わってくる。Intelの主力事業であるPC向けを細々と販売していくのではなく、そうした成長市場の獲得も狙って、その先にあるデータセンターなどと一貫したソリューションを提供していく」(同)とし、まずは日本の産業界の強みである工作機械などにIoTの機能を付与することを目指し、その先に老朽化が懸念されるようになってきている社会インフラに向けた適用や自動車分野に向けた適用を狙っていきたいとする。

同社がこれまでも組み込み分野の取り組みを説明する際に語ってきた数字。ET2012などでは、2015年で150億台としてきたが、今回は2020年に500億台とさらに台数規模が拡大していくことが見込まれるとする

なお、そうした取り組みの別視点としてリテール部門向けに対しても注力しており、そうした分野で、よりデジタルサイネージを活用してもらうためのソリューションが今回のRCMになるとする。RCMは、シンプルで直感的なGUIを採用し、数分でキャンペーンやプロモーションを作ることを可能とするソフト。ネットワーク管理も可能なため、ユーザーアクセスの管理やリアルタイム障害レポート、現場担当者への対応、顔認識ソリューション「インテル オーディエンス・インプレッション・メトリック・スイート(Intel AIMスイート)」の活用による広告閲覧者にマッチした広告の自動提供などを実現することが可能であり、こうしたソリューションも含め、積極的にIoT市場にアプローチをかけていくことで、「Intelは次の勝ち組になる」と意気込みを見せた。