アドビ システムズは、11月8日に東京・丸の内のJPタワーにてクリエイティブフェスティバル「Create Now / PLUS ONE DAY」を開催した。ここでは、アドビ製品のツールを使用するためのコツやユニークな使用方法を様々なジャンルのクリエイターが披露した同フェスティバルのセッションから、福岡のクリエイティブ・スタジオ「空気」に所属する木綿達史氏と上原桂氏のセッションの様子をレポートする。

セッションでは、空気が手掛けたモーショングラフィックスを使ったWebコンテンツや映像作品などを紹介。そして、それらの素材として使用されたストックフォトやムービーを提供しているゲッティ イメージズ ジャパンの永田毅俊氏が司会役となり、木綿氏や上原氏と会話を行いながら制作秘話などが披露された。

左から、上原桂氏、木綿達史氏、永田毅俊氏

ストックフォトを活用して多彩な背景を実現

木綿氏は、自動車を360度の全方向から見ることができる、モーショングラフィックスを使ったWebコンテンツの制作秘話を紹介。ソフトはAfter Effectsを使用し、背景などの素材にストックフォトが使われている。通常、こうしたコンテンツは自動車だけを表示するが、紹介された作品では生活を感じられるようにと、背景や車を利用する人物などが配されている。さらに、車を表示する角度によって背景や周囲の人物が変化し、周囲の人物等が動くモーショングラフィックスも取り入れた、遊び心のある作品となっていた。

自動車を回転させることで変化する背景には、ショッピングモールの駐車場、街中のパーキングエリア、サーファーや海水浴客で賑わう海岸、夜の街頭下などがあり、膨大な写真の中から自由に選べるストックフォトを使ったからこそ、バリエーション豊かな背景が実現したのだろう。これに関して木綿氏は、「当初は、3DCGで背景を組み上げる予定でしたが、フォトストックを使った仮り組みが意外と良かったため、そのまま仕上げることになりました」とコメントしている。

また、人物に関しては別途に撮影をしているが、海外向けのコンテンツなので、登場する人も外国人であることが求められた。しかし、外国人のモデルはコストが高くなるため、日本人で撮影した後に顔だけをストックフォトの写真に差し替えるという、ユニークなストックフォトの活用方法も紹介された。

オリンピック招致PRフィルムにストックムービーを使用

上原氏は、東京2020オリンピック・パラリンピック国際招致PRフィルム『Tomorrow begins ~未来(あした)がはじまる~』の制作秘話を紹介。同作品は、企画から納品までが1カ月間ほどしなく、本来なら全編を撮影したいところを、ストックフッテージ(ストックムービー)を使用せざるを得ない状況であったという。

苦労した点は、膨大な量のフッテージの中から使えるシーンを選び出す作業や、全編撮影の作品に引けを取らない完成度に仕上げること。シーンを選ぶ作業では、候補となったフッテージ全てを早送りで目を通しながらマーキングを行い、さらにマーキングされた中から使う部分を選び出すという、根気のいる作業になったという。完成度に関しては、企画段階でストーリーを作成したり、要所のみを個別に撮影するなどして、フッテージの編集映像でありながら、ストーリーに沿って撮影したような作品へと仕上げている。

モーショングラフィックをプレゼンに応用

木綿氏は、プレゼンテーションにモーショングラフィックを使用する、という提案も行っている。セッションでは、「一瞬で夫婦喧嘩を回避する方法」というプレゼンテーションを実演し、コミカルなキャラクターの動きや効果音が、視聴者を引きつける効果があることを解説した。

モーショングラフィックを使用したプレゼン作品「一瞬で夫婦喧嘩を回避する方法」

プレゼンテーションで使用した作品はAfter Effectsで制作されており、実際にAfter Effectsで仕事を行っているクリエイターであれば、簡単に制作できるレベルとのこと。After Effectsは、CS6以降から基本となる図形を取り込んだらシェイプ化して作り込めるようになっているため、以前ならIllustratorを併用していた作業の多くがAfter Effects単体で可能になっているという。